研究課題
前年度に188cm望遠鏡の赤経軸・赤緯軸・副鏡の駆動系と制御系、並びに、ドーム制御系の機能更新を実現した。この更新により、188cm望遠鏡の機械系の指向精度はRMSで1秒角台に乗り、微小角移動精度は1秒角を上回り、ドーム制御性能も向上した。本年度(平成25年度)には、このリニューアルされた188cm望遠鏡と既存の観測装置を統合した制御系の構築を進め、従前を上回る天体観測性能を実際の科学観測において達成した。ドップラー法で単位時間当たりに探索できる天体数はおよそ2割増となった。一方、系外惑星系探索の自動化のために必要となる188cm望遠鏡の残留指向誤差の主要因を調査・分析し、それが主鏡の位置ずれの非再現性であることを突き止めた。この特定により系外惑星系探索の自動化のより具体的な道筋が得られた。ドップラー法による中質量巨星の惑星系探索も継続して推進した。そのため188cm望遠鏡の観測時間を約70夜確保した。目標の80夜には満たなかったが、観測効率の向上により、前年度までと同等のペースで探索を推し進めることができた。平成25年度は、K型巨星HD4732, G型巨星HD2952, G型巨星HD120084, G型巨星ω Serpentisの4星に新たな惑星系の発見を報告した。HD4732にはいずれも約2倍木星質量の2惑星が軌道長半径1.2AUと4.6AUのところを周回しており、軌道安定性解析からそれぞれの上限質量を約28木星質量とした。HD120084には下限質量4.5木星質量の非常に大きな軌道離心率(e=0.66)を示す惑星が長半径4.3AUの軌道を巡っていることが分かった。しかし、大離心率の原因として、第三の天体による散乱や摂動の可能性は低いことが分かった。HD2952とω Serにはこれまでに中質量巨星周囲で発見された中で最も軽い部類に属する1.6木星質量と1.7木星質量の下限質量を持つ惑星を検出した。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度には、機能更新した188cm望遠鏡と既存の観測装置とを統合した制御系を構築し、観測効率を向上させたシステムで中質量巨星の惑星系を探索する計画であった。実際に188cm望遠鏡と観測装置を統合した制御系を実現することができ、従来より約2割高い時間効率で天文学観測を進めることができるようになった。そのため、平成25年度に確保できた観測夜数が目標を下回り約70夜であったが、観測効率の向上により、前年までと同程度に惑星系探索を進めることができた。そして新たな惑星系の複数検出を報告することができた。惑星系探索は概ね順調に進展しており、研究目的もほぼ予定通りに達成されていると判断した。
平成26年度には、188cm望遠鏡の残留指向誤差の補正機構の開発を進める。その上で系外惑星系探索の自動化作業を段階的に進める。観測効率をより向上させ、より多くのデータ獲得を進める。また、一層の省力化を進めてデータ解析への集中度をより高められるようにする。それらにより研究成果の増大を図っていく。188cm望遠鏡の観測能力を高める一方で、中質量巨星の視線速度モニター観測による惑星系の探索を継続・拡張する。Vバンドで7等級より明るいおよそ600星のG,K型巨星の精密視線速度測定を推進する。そのため188cm望遠鏡で年間80夜前後の観測夜数を確保する努力を続ける。観測時間の確保のためには、国際協力を進めることも検討する。得られた成果については社会に積極的に公表していく。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) 備考 (3件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 65 ページ: Art. No.85,12pp
10.1093/pasj/65.4.85
http://www.oao.nao.ac.jp/public/research/extra-planet-2012/
http://www.oao.nao.ac.jp/public/research/hd4732/
http://www.oao.nao.ac.jp/public/research/hd100655/