研究課題
近年の研究により70~100億年前の宇宙では、現在よりもはるかに活発に星形成や超巨大ブラックホールの成長が行われていたことが明らかになった。我々はこの「激動期宇宙」の銀河の活動性の解明を目的に、北黄極領域で行われた赤外線天文衛星「あかり」を中心とする多波長観測研究(基盤研究(A)、平成16-19年度)に新たな多波長データを加え、独自方法による活動銀河核の赤外線光度への寄与を評価し正確な星形成率を求める。平成24年度は、研究支援員を雇用し、1. 取得したハーシェル宇宙天文台のデータ解析及びJCMTによるサブミリ波観測、2. 可視・近赤外多波長データ(CFHT可視(megacam)・近赤外(WIRCAM)撮像データおよび、すばるFMOSによる多天体分光データの解析3. 「あかり」の近中間赤外線カメラ(2.4-24μm)9バンドでの北黄極領域撮像の再解析画像をベースとした新たな銀河カタログの性能評価、等は予定通り実施し、その成果を国内外の学会・研究会での発表および論文執筆を行った。
2: おおむね順調に進展している
北黄極領域で見つかった赤外線銀河の多波長(紫外~中間赤外)カタログを基礎とする激動期宇宙における銀河の活動性研究に関して 当初計画で設定した3つの研究項目を実施した:1. 取得したハーシェル宇宙天文台による波長250、350、及び500μmにおける高空間解像・高感度観測のデータ解析。また可視~中間赤外線データから抽出した特異に赤い銀河の波長250μm対応天体を見出し、その活動性の研究を行った。一方、波長850μmでのサーベイ観測については、JCMT/SCUBA-2の公募観測時間を取得し、キュー観測にて実施することができた。2. CFHT可視(megacam)・近赤外(WIRCAM)撮像データの解析。これまで「あかり」中間赤外線ディープサーベイ領域全域をカバーする可視・近赤外の充分深い撮像データが得られていなかったが、今回得られたデータを解析し、「あかり」中間赤外データを無駄なく活用するのに充分な深さ・広さであることが確認され、成果を論文にまとめた。また平成23年度計画からの繰越で実施した国立天文台ハワイ観測所の近赤外ファイバー多天体分光器FMOSの観測データを解析し100天体あまりの激動期宇宙の星形成銀河からの水素再結合線・金属イオン禁制線データを取得することができた。また平成23年7月に取得したハワイ・ケック望遠鏡の多天体分光観測データ解析が終了し塵に減光された輝線からの星形成評価により修士論文が作成された。3. 「あかり」がカバーする2.4-24μmでの北黄極領域撮像データの再解析に基づいた新たな銀河カタログを構築、その性能評価・信頼性評価を行い論文にまとめた。また激動期宇宙の塵に隠されて可視近赤外分光観測が困難な、しかしサブミリ波では明るい銀河のミリ波広帯域分光観測を計画したが、観測所の都合により24年度の実施は見送られ、25年度に装置改修のため渡米した。
平成25年度からはこれまでの成果をベースに、以下の3つの研究項目を行い、激動期宇宙における正確な星形成率、及びCompton Thickも含む活動的銀河核の寄与の正確にもとめ、両者の関係の解明を目指す。引き続き研究支援員を雇用する。1. 遠赤外・サブミリ波データの利用による「あかり」中間赤外選択銀河の精密な星形成率評価(JCMTによるサブミリ波高感度観測データの解析も含む。主に研究支援員が従事)。さらに理論モデル(フランスの研究協力者のコードによる)による物理量抽出を試みる。2. チャンドラX線天文台と「あかり」中間赤外データの特徴を活かした活動的銀河核の分類との比較検討(宮地(海外研究協力者)・松原・大薮(分担者)、及び大学院学生)。3. 地上大口径望遠鏡の多天体分光器による天体の近赤外スペクトル線データによる金属量・星形成率の評価と、赤外線データから見積もられる星形成率の比較検討(研究支援員と大学院学生)。これらを効率よく進めるために、海外研究協力者(英国及びフランス)の日本に招聘し、それぞれ8月と11月に一月程度の集中的な研究を実施する。また広く世界に対して研究成果の公表を行うため、「あかり」を中心とする多波長画像およびカタログの整備と公開を行う。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (5件)
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