研究課題/領域番号 |
23244043
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田村 裕和 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10192642)
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キーワード | ハイパー核 / ガンマ線分光 / 磁気モーメント / ゲルマニウム検出器 / J-PARC / Λ粒子 / ハイペロン |
研究概要 |
H24年度から実施予定のJ-PARC E13実験に向けて、Ge検出器群Hyperball-Jの調整を東北大学で行った。Hyperball-Jの心臓部分である低温型Ge検出器とバックグランド抑止用PWOカウンターについては、東日本大震災で一部が被害を受けたため、テスト・修理を行った。また、検出器の詳細な個別性能チェックを行うとともに、HVやGe検出器冷凍機等の制御システムを完成させ、Hyperball-Jの磁気シールドやケーブル類などの周辺装備を整えた。 Hyperball-Jの耐計数率を向上させるため、PWOカウンターについては、高品質のロシア製PWO結晶を購入して日本で加工し、これを用いて4台のPWOカウンターを製作した。これらは計数率が特に高いHyperball-Jの下流箇所に組み込んでテストする予定である。 今後J-PARCのビーム強度が上がった場合に備え、波形読出しとそのオフライン解析によるHyperball-Jの高計数率読出し法の開発を進めた。リセット型プリアンプを使用しているため、waveform digitizerの前段にpick-off回路を入れてリセット時のoverloadを急速に回復することとし、試作回路をつくってテストを行い、良好な見通しが得られた。 B(M1)測定のために必要な低密度の19F標的として、フッ化水素標的を使用することとし、専門家の助言を受けながら、安全性に配慮してテフロン製の標的容器の設計を行った。また、液体ヘリウム標的を設計し、製作を進めた。 E13実験の現実的なsimulationを行い、標的物質やビーム運動量の最適化を行った。7Li標的によるB(M1)測定では、K1.1ラインにおいて運動量1.1GeV/cのK-ビームを用いる場合が最も測定精度がよいことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災のためJ-PARCが被害を受け、ビーム再開まで10か月の遅延が生じるとともに、Hypernball-Jの検出器も地震の被害を受けた。被害を受けた検出器の多くは、震災復興予算で修理できた。また、検出器の詳細なテストは順調に進み、H23年12月のJ-PARCビーム再開までには、性能確認ができた。ただ、当初H24年度初めに予定されていたE13実験は、10か月のビームタイム遅延にあわせてH24年度末の開始となった。 一層のビーム強度増加に備えたPWOカウンターの製作やGe検出器読出し回路の開発は、ほぼ順調に進んだ。 フッ化水素の標的容器の設計は順調に進んだ。液体ヘリウム標的の設計、製作も順調に進んだ。ただし、これを実験室で動かすために必要な冷凍機システムの整備については、現場の状況の変更があり、繰り越してH24年度に冷凍機を購入した。しかし、ビームタイム自体が遅れたため、実際の影響はなかった。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度末からH25年度前半に、E13実験の前半のビームタイムが割り当てられたため、それに合わせて引き続き実験準備を進めた上で、実験を実施する。また、後半のビームタイムはH25年度末からH26年度にかけて新しいK1.1ビームラインで割り当てられる見通しとなったため、K1.1ラインでの実験のためのビームライン検出器系の整備も今後進めることとする。
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