研究実績の概要 |
核内Λ粒子の磁気モーメントを調べるためのハイパー核γ線分光実験として、H26年度までに4ΛHe、19ΛFハイパー核のγ線分光実験(J-PARC E13)を実施する予定であった。H25年5月に起きたJ-PARC事故により施設の運転が中断し、事故対策として進められたハドロン施設の改修が予想より遅れ、H26年度内には運転が再開しなかった。だた、必要な実験装置の設置、調整、性能テストをすべて完了したため、H27年度4月の施設再開直後にデータが取れ、結果が出せることとなった。H26年度の成果は以下の通り。 ○J-PARC K1.8ラインに設置したHyperball-Jの検出器の真空引き等のメンテナンスを行い、再び設置して動作確認を行った。また、製作した液体ヘリウム標的の性能確認を行った。フッ素標的として、HFにかわりCF4の低温液体標的を開発し、完成させた。 ○H25年度の事故前に収集したテストデータを解析し、1.8, 1.5 GeV/cのK-ビームによるK-p→Σ+π-反応の微分断面積を導出すると共に、1.8 GeV/c(K-,π-)反応における12ΛCハイ-パ核の生成の微分断面積を得た。これらは、(K-,π-)反応を理解するための貴重なデータとなった。さらにK1.8/SKS磁気スペクトロメータの性能も確認した。 ○磁気スペ-クトロメータ系とHyperball-Jの解析プログラムを開発・改良した。目的のハイパー核γ線ピークにドップラーシフト減衰法を適用してγ線放出の寿命を求め、そこから核内Λ粒子のg因子を導出するための解析プログラムも開発した。 ○将来のJ-PARCビーム強度向上に備えて開発してきた波形読出しによるHyperball-J高計数読出し回路系について、信号前段処理回路の開発に成功し、米国アルゴンヌ研究所製の波形デジタイザシステムと接続して使用可能となった。
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