研究課題/領域番号 |
23244046
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松田 恭幸 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (70321817)
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研究分担者 |
齊藤 直人 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (20321763)
下村 浩一郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (60242103)
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キーワード | 超微細構造 / ミュオン / ミューオン / ミュオニウム / RF共鳴空洞 |
研究概要 |
本研究の目的はミュオニウム原子の基底状態の超微細構造の精密分光を行うことである。ミュオニウム原子とは水素原子の陽子を正荷電のミュオンで置き換えた原子であるが、水素原子と異なりハドロンの大きさや内部構造を考慮する必要がないこと、ミュオンの寿命が 2.2秒と比較的長いことから、QED の検証や標準理論を超える新しい物理の探索のための強力なプローブとして用いることができる。本研究を実現するためには、不均一度が 1ppm 以下の磁場を作る超伝導磁石、二つの共鳴周波数を持つRF共鳴空洞、不純物濃度が 1ppm 以下の高純度のガスを長期間保持するガスチェンバー、高磁場中で動作する高セグメント化された陽電子検出器等が必要となる。 本年度においては共鳴空洞の設計・作成と、超伝導磁石、高セグメント化された陽電子検出器の概念設計を行った。RF共鳴空洞については、有限要素法による共鳴モードの計算を基に、超高真空対応の移動ステージを内部に設置し、誘電体の位置を動かすことで外部から共鳴周波数をコントロールすることができる設計とした。H23年11月に制作が完了後、基本的な特性についての測定を行い、その成果をH24年3月の日本物理学会で発表した。また、共鳴空洞に取り付けるマイクロ波システムについては節電等により電力部品の供給体制が不安定となったため制作が遅れたが H24年7月に完成し、所定の性能を確認した。 超伝導磁石については有限要素法による磁場計算と機械強度計算を行い、冷凍機による振動が与える影響について評価した。これらの成果を H24年3月の日本物理学会で発表した。 陽電子検出器についてはマルチアノード型の高電子増倍管と MPPC との性能比較を行った。高磁場耐性の面で MPPC には優位性があり、これを第一候補としてさらに設計をすすめることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
震災と節電による影響によってマイクロ波システムの制作は予定より遅れたものの、重要部分であるRF共鳴空洞が予定どおりに制作され、所定の性能を持つことが確かめられたことは本研究課題の遂行にとって重要な進展である。 陽電子検出器については KEK ミュオングループとの間の共同開発体制が確立しつつあり、実機仕様の決定と、その後の量産にめどがつきつつある。また、強磁場によるミュオンからの崩壊陽電子の軌道計算も順調にすすみつつあり、陽電子検出器の設置位置がほぼ確定したことで、実験に必要なほかの装置の設計も進みつつある。
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今後の研究の推進方策 |
H23年度に作成した RF キャビティとマイクロ波システムに、今年度新たに作成する Kr ガスチェンバーを組み込み、温度とガスの不純物濃度についてのモニタを行い、長期間安定して稼働させるための条件を確立する。 陽電子検出器として採用予定の MPPC について、高レートで安定して稼働させるための条件を確立するとともに、高効率でデータを収集するためのボードを開発し、実験開始に備える。 本年度制作される予定の超伝導磁石が完成し次第、全体を組み立て本実験に備える
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