研究課題/領域番号 |
23244046
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松田 恭幸 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (70321817)
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研究分担者 |
齊藤 直人 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (20321763)
下村 浩一郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (60242103)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ミュオニウム原子 / ミュオン / 超微細構造 / RF キャビティ / 高純度ガス |
研究概要 |
本研究の目的はミュオニウム原子の基底状態の超微細構造の精密分光を行うことである。 本研究を実現するためには、不均一度が1ppm 以下の磁場を作る超伝導磁石、1ppm 以下の精度を持つ磁場モニター、二つの共鳴周波数を持つ RF共鳴空洞、不純物濃度が 1ppm 以下の高純度の Kr ガスを長期間保持するガスチェンバー、高磁場中で作動し高いレートに耐える陽電子検出器等が必要となる。 昨年度の共鳴空洞の設計制作と陽電子検出器の概念設計に引き続き、本年度は、ガスチェンバーの設計・制作、RF共鳴空洞の温度コントロールシステムの設計・制作と、高セグメント化された陽電子検出器の開発を行った。陽電子検出器については昨年度に固めた概念設計をもとに、使用するプラスチックシンチレータの厚みとサイズの最適化、ならびにMPPC モジュールとシンチレータとの光接触部の最適化による改良版の制作に成功し、密封線源ならびに宇宙線を用いて性能試験を行った。これらの成果は H25年3月の日本物理学会で発表された。 Kr ガスチェンバーは別途資金によって設計を進めていた超伝導磁石内に設置される計画であったが、H24年8月にこの磁石が実験のために必要な要求を満たさないことが判明し、急遽仕様を変更する必要が生じた。これに伴いガスチェンバーの設計をやり直すことになったために制作が遅れ、ガスチェンバーと共鳴空洞の温度コントロールシステムは H26年3月に完成した。ガスチェンバーについてはリーク量およびアウトガス量を測定し、また温度コントロールシステムについてはリークチェックと流量の測定を行い、要求性能を満たすことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超伝導磁石の設計変更を余儀なくされたことによって、Kr ガスチェンバーならびに RF 共鳴空洞の温度コントロールシステムの制作と動作確認に遅れが生じたものの、作成された装置の性能は所定の性能を満たすことが確認されたことは大きな進展である。 また、陽電子検出器については改良版の制作が進み、その性能を宇宙線や密封線源で確認できたことは大きな進展である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に制作した Kr ガスチェンバーに数カ月にわたって不純物が 1ppm 以下の Kr ガスを保持するためのガスハンドリングシステムを開発する。 また、陽電子検出器については、改良版試作機の完成を受け、ビームを用いた実証試験を経て量産に入る。 本実験に入る前に、予期せぬ系統誤差がセットアップに含まれていないか確認することが必要である。そのために大規模なシミュレーションを進めるとともに、超伝導磁石内の磁場を1ppm 以下の精度で測定するための磁気プローブや RF 共鳴空洞内部の電磁場を直接測定するRFプローブの開発を進め、系統誤差を実験的に求める。 これらの進捗を受け、本実験に備える。
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