本研究では、 (1)極低エネルギー中性子(UCN)の輸送・貯蔵用の界面技術の確立 (2)加速器に同期する磁場を用いた中性子収束方式の確立を目的としている。 (1)に関しては、UCNガイド管の大型化に向けて大量作成可能な中性子ミラーの成膜方法の検討を行った。 ダイヤモンドライクカーボン、ニッケルカーボン合金などの中性子反射特性をJ-PARC中性子反射率計を用いて評価した。特に重水素化したダイヤモンドライクカーボンは中性子に対する光学ポテンシャルが243 neVを達成し実用レベルのものを作成することに成功した。またそれらの非鏡面反射率を定量的に評価するための実験を行い、実機において88%の輸送効率を達成できる見込みが得られた。非鏡面反射率を表面粗さの測定から導出するための物理モデルを構築した。 (2)に関して、超冷中性子密度を保持して発生位置から実験領域へ輸送する「Rebuncher」という装置を開発した。Rebuncherは磁場中でUCNのスピンを反転させることでエネルギーを調整し、実験領域位置へ同時に到達させ空間的に集束させる装置である。Rebuncherによる運動エネルギー変化は印可される高周波磁場の周波数に比例する。コンデンサーの改良により周波数帯域を7MHzから30MHzと拡張し、より広いエネルギーのUCNを集束できるようにした。電力源を 1kW から 3kW に増強し、中性子スピン反転率100%に必要な磁場強度(2mT) が得られるようになった。3He ガスを使った比例計数管である UCN検出器は、回路上のノイズが大きかったため、改良した。ドップラーシフターからの振動によるマイクロフォニックノイズの影響を避けるため、通常の電荷積分型ではなくハイパスフィルターを付加し、信号よりも低い周波数帯のノイズの除去を図った。理研小型中性子源にて中性子検出動作をテストした。
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