研究課題/領域番号 |
23244050
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊藤 好孝 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 教授 (50272521)
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研究分担者 |
増田 公明 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 准教授 (40173744)
さこ 隆志 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助教 (90324368)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 宇宙線 / 加速器実験 / 国際協力 / 実験核物理 / 素粒子実験 / 国際研究者交流 / LHC / CERN |
研究概要 |
本年度は7TeV陽子陽子衝突からの中性パイ横運動量データ、900GeV陽子陽子衝突からのゼロ度ガンマ線データなどを論文として出版した。これらのデータを含めLHCf実験の成果について数多くの国際会議で報告を行なった。また、ゼロ度中性子データの解析に着手した。 Arm2検出器を加速器トンネルに設置し、2013年初頭に行なわれた陽子-鉛衝突でのcho超前方データの取得に成功した。 13TeV陽子陽子衝突にむけて検出器のアップグレードを進め、Arm1検出器についてGSOシンチレーターへの交換作業を行い、HIMAC加速器においてビームテストを行ない、その性能評価を行なった。特にシンチレーティングファイバーのかわりにGSOバーを用いた位置検出器の開発に目処をつけた。 RHIC加速器における500GeV陽子陽子衝突および、陽子ー軽原子核衝突でのデータ取得の可能性を検討した。RHICで研究を行なっているハドロン物理学者と協力して具体的な実験計画をLOIとしてまとめて提出するための準備を開始した。これらの成果は1月にブルックヘヴン研究所で行なわれたpA@RHIC研究会で報告された。 素粒子物理、原子核物理、宇宙線物理にまたがる異なるフィールドの研究者の間の連携を形成しまた、本研究の研究成果を国際的に発信するために、国際研究会「高エネルギーでのゼロ度散乱研究会」を名古屋大学で開催した。約10名の外国人を含む40名程度の参加者により活発な議論が行なわれ、国際的な研究ネットワークの形成がなされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2010年に取得したデータの解析は順調に進み、これまで7TeV陽子陽子衝突からのゼロ度ガンマ線、中性π中間子横運動量、900GeV陽子陽子衝突からのゼロ度ガンマ線、など、主要な結果がまとめられ論文として出版され、国際的にも高い評価を受けている。 また13TeV衝突のための検出器準備は順調に進んでおり、GSOシンチレーターを用いた検出器の改造に目処がついている。 13TeV陽子陽子衝突のスケジュール自身がCERN研究所の方針により1年遅れてしまい、本研究費の時限内に実現するのが微妙な状況になった事が唯一のマイナス点であるが、その代わりに当初予定にはなかった陽子ー鉛衝突データを取得する事が出来た。これは空気シャワー形成に於ける原子核効果の検証を行なう初めてのデータであり。マイナス点を補って余りある成果となった。 これらの成果から、国際会議での招待講演、セミナー依頼は飛躍的に増え、日本物理学会誌などでの研究紹介記事もあって、研究の認知度が急激に上がっている。これらを鑑みて、研究の状況は当初の計画以上に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、ゼロ度中性子データ解析、および陽子ー鉛衝突データの解析を完遂して論文として出版し、空気シャワー形成に重要な要素である「衝突の非弾性度」の測定、および超前方粒子生成における「原子核効果」の測定を行う。また、これらが空気シャワー形成に実際にどのような影響を及ぼすかを定量的に評価するために、空気シャワーシュミレーション研究をさらに推し進める。またハドロン物理学者との連携をさらに進めるために、他分野研究会への出席やセミナー活動を通じて宇宙線分野とハドロン物理学を横断した研究ネットワーク形成を行なってゆく。また、2014年初頭に予定されるLHC13TeVでのデータ取得に関して、できる限り本研究費の期間内でデータ取得が終了するように、関係機関に働きかけると共に、検出器や読み出しシステムの準備などもしっかりとやっていく。
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