研究課題/領域番号 |
23244051
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田島 宏康 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 教授 (80222107)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 宇宙線 / 宇宙物理 / 素粒子実験 / 放射線 |
研究概要 |
4x4のMPPCモジュールの性能試験を実施し、期待通りの性能が出せることを確認した。さらに紫外領域で検出効率のよいMPPCを入手し、その性能試験を引き続き実施したが、期待する改善は見られなかった。MPPCからの信号の立ち上がり時間が想定外に長かったが、電子処理回路を改良することで短縮に成功した。また、MPPCの基礎特性の温度依存性を測定し、運用環境で予想される温度範囲での最適化条件を決定し、その場合の性能を計算したところ、クロストークが問題となる可能性があることが判明したため、製造メーカーと協力し、クロストークを1/5以下に改善したMPPCを開発した。その性能を測定したところ、光検出効率も下がってしまうことがわかったため、光検出効率への影響を改善した検出器を開発中である。並行してThrough-Silicon-Via(TSV)技術を利用したMPPCを利用し、さらにレンズで集光することで不感領域の影響を抑制する方法を設計したところ、95%近くの開口率になる見込みであることを確認し、本研究の目標の一つである75%以上の開口率を実現できる目途が立った。 一方で、高密度のMPPCからの電気信号を処理するための集積回路の開発も並行して実施した。集積回路の設計に不具合があったため、改良した集積回路を製造し、その性能評価を行い、所定の仕様を満足していることを確認した。さらに、カメラモジュールを1台試作し、光検出器を接続して試験をした。その結果、想定通りの実用上性能を確認できたため、1カメラに相当する32カメラモジュールの量産の準備を開始した。並行して、集積回路のトリガー性能の向上のためさらないる調査をした結果、波形記録時のコントロール信号による性能劣化を確認したため、改良した集積回路を試作し試験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MPPCの開発においては、光検出効率が想定より良かったため、国際共同実験であるCTAでの初期設計に採用され、順調に進んでいる。紫外領域でさらなる改良をねらったMPPCの性能は期待通りではなかったが、あらたに開発されたTSV技術を利用したMPPCを活用し、レンズで集光することで不感領域の影響を抑制する方法を設計し、95%近くの開口率になる見込みであることを確認したところ、本研究の目標の一つである75%以上の開口率を実現できる目途が立った。また、平成24年度の測定でクロストークが問題となることが判明したが、それを1/5以下に改善する検出器を開発に目途がつきつつある。 一方で、集積回路の開発では、一部に設計の不具合があり再設計となったが、全体の計画では、1度の再設計は想定されており、再設計後の集積回路は所定の仕様を満足することを確認されたため、計画の遅れにはなっていない。この集積回路を搭載したカメラモジュールに光検出器を接続してモジュールでの試験をした結果、想定通りの実用性能を確認できたため、1カメラに相当する32モジュールの量産の準備を開始しており、平成26年度にはカメラ試作機での実用試験をかんできる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
MPPCの開発においては、クロストークと光検出効率の改善を両立した検出器の開発を継続し、さらなる性能の向上を図る。また、TSV技術を利用したMPPCにレンズを組み合わせたモジュールを試作し、開口率を実測する。その際、レンズを利用することによって光量測定の非線型性が増すことがわかっているが、その効果も合わせて実測する。 並行して1カメラに相当する32モジュールの量産を完了し、カメラを試作して実用試験を実施する。1度に多くのモジュールを動作させることによる干渉などで雑音性能が劣化する可能性があるため、注意深く試験する。さらにトリガー性能を改善した集積回路の性能を確認する。
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