平成25年度までの研究で、当初の目標であった75%の開口率を達成する見込みが立ったたが、MPPCでは、一つの光子の入射に対して複数の光子に対応する信号を出力するクロストークとよぶ現象があり、クロストークによって入射光子数より大きな出力することで、光子数の少ないバックグラウンドをガンマ線シャワーの現象と間違えてしまうことが問題となる。平成25年度中にクロストークレートを抑制する素子を試作し、クロストークレートが1/5以下に改善することを確認したが、光検出効率も低下する副作用があるとことが判明した。クロストークレートを抑制するための構造が不感領域となることが原因であることがわかっているため、平成26年度にクロストークレートの抑制効果を保ちつつ不感領域を最小にする改善をした素子を試作した。その結果、クロストークレートの抑制効果を保ちながら光検出効率を以前の水準まで回復することを確認した。 一方で、高密度のMPPCの電気信号を処理するための集積回路の開発も並行して実施した。平成25年度までの開発で、波形記録回路とデジタル化回路に関しては所定の性能を達成しているが、トリガー回路に関しては波形記録時のコントロール信号の干渉による性能劣化を確認したため、改良した集積回路を試作した。平成26年度に改良した集積回路のトリガー性能を測定したが、その効果が見られなかった。その結果を受けて、波形記録回路とトリガー回路を独立の集積回路を製造した。
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