研究課題/領域番号 |
23244053
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中嶋 隆 京都大学, エネルギー理工学研究所, 准教授 (50281639)
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研究分担者 |
松尾 由賀利 独立行政法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (50231593)
小林 徹 独立行政法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (70202067)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 核スピン / 偏極度 / 超微細構造 |
研究実績の概要 |
実験研究においては、前年度に開発した狭帯域波長可変ナノ秒レーザーを用い、Ybイオンの超微細構造を波長分解する実験を進めた。4段増幅のため、パルスエネルギーが不足して十分な信号強度が得られないという問題は解決したが、超微細構造の分解が不十分であった。そこで方針を変えて、Yb原子を基底状態から励起する光源用として、狭帯域波長可変ナノ秒レーザーの波長を調整し直し、基底状態からの選択励起ができるかどうかをレーザー誘起蛍光法によって確認することとした。見えるべき数本の発光性のうち、実際に確認できたのは2本であった。この理由としては、光源の線幅が不十分であること、およびドップラー広がりによってスペクトルがつぶれてしまっていることの2つが可能性として考えられる。いずれにせよ、レーザー波長と蛍光波長がほぼ等しいために、散乱によるバックグラウンド信号が無視できず、精密な測定を阻害しているのが現状である。 理論研究については、生成したイオンの核スピン偏極度をモニターするための新手法の考案および理論評価を行った。例として、Ybイオンと同様の原子構造を持つ水素原子を考えた。水素原子の核スピン偏極度をモニターする方法として古くから知られている方法手として、たとえばラムの方法などがあるが、複雑な装置を必要とする。我々が考えたのは、光電子を測定することにより、核スピン偏極度を簡便に測れないか、ということであった。詳細な理論解析を行ったところ、角度分解した光電子を検出する測定系があれば、超微細構造はおろか微細構造さえも選択励起しない、短パルスによる共鳴励起をししても、核スピン偏極度を正確に評価できる、という結論が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理論研究については、光電子信号から核スピン偏極度を評価するという新しい手法を考案し、順調に研究が進んでいるが、実験研究については、狭帯域波長可変ナノ秒レーザー光源の開発には成功したものの、必要な超微細準位が実際に選択励起できているかの確認がまだ得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、開発したレーザー光源の線幅を実測し、設計した通りの線幅になっているかどうかの確認をする。また、原子ビームについてはドップラー幅が十分に抑えられているかどうかを確認し、不十分であれば、アパーチャーを導入するなどしてドップラー幅の抑制に努める。
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