研究課題/領域番号 |
23244055
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
杉立 徹 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80144806)
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研究分担者 |
志垣 賢太 広島大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (70354743)
本間 謙輔 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教 (40304399)
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キーワード | クォーク物質 / フォトン物理 / ALICE実験 / クォークグルーオンプラズマ / QGP / 高エネルギー原子核衝突 / 極初期宇宙 / LHC加速器実験 |
研究概要 |
最高エネルギーの原子核衝突が創る超高温クォーク物質の基礎物性を明らかにするため、本代表者が先行研究によりCERN研究所ALICE実験に共同建設した高性能フォトン検出器PHOSを用いて、LHC加速器ビーム衝突実験を実施し、以下の成果を得た。 1.2011年陽子+陽子衝突再開以降、高輝度・高統計データにてPHOS検出器のエネルギー較正を継続した。その結果、中性パイ中間子に対してΔm/m=4.07/136=3.0%の高分解能を達成し、1万素子を超えるGeV領域電磁カロリメータ実機として史上最高性能を証した。 2.11月から核子対あたり2.76TeVにて2年目の鉛+鉛原子核衝突実験を4週間実施し、高品位PHOSデータの収集に成功した。ALICE実験全体として当初計画を上回る3.2PByteを収集した。 3.広島大学に置くわが国唯一のALICE実験地域解析拠点をフル稼働させ、膨大な実験データの効率的解析を分担した。一部資源を大学院生も含めたわが国解析チームに優先的に割り付け、解析活動の活性化と研究組織の若手強化を図った。 4.LHC加速器の高輝度化を見据えたPHOS検出器増強及び高度化の検討を進め、増強高度化原案を10月、ALICE実験検出器増強部会に提出した。国内においてはXilinx社FPGA評価基板を用いた開発研究を開始した。 5.2011年にALICE国際共同実験共著として、広島大学6名(内、院生3名)を韓せた学術論文8編を公表した。更に、本代表者は、一般科学雑誌「パリティ」(丸善出版)2012年1月号「特集:物理科学、この1年」に「LHC原子核衝突実験:クォーク物質を探る」を執筆し、本研究の取り組みと成果を広く社会国民へわかりやすく発信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・LHC加速器陽子+陽子衝突、及び鉛+鉛原子核衝突実験データの収集に成功し、PHOS検出器のエネルギー較正、及びデータ解析も順調に進んでいる。 ・LHC加速器の高輝度化に向けたPHOS検出器の増強高度化原案の策定に成功し、新たな読み出し技術の評価準備が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
・ALICE実験総括責任者P.Giubellino研究員他4名を招聘し、3月26・27日に大阪大学中之島センターにて研究進捗状況の検討会を行い、今後の研究方針を確認し相互理解を深めた。 ・PHOS検出器の高性能稼働及び高品位・高統計データ取得を受け、当初計画通りフォトン物理のデータ解析を進める。はじめに、中性パイ中間子に着目し、横運動量抑制現象を明らかにする。 ・PHOS検出器増強高度化原案には、(1)データ読出の高速化、(2)光検出素子の改良を重要項目として提案した。(1)は当初計画通りSRU方法の技術開発を進める。(2)については、浜松フォトニクス社MPPC素子を使った技術開発を本研究課題に含める。
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