研究課題/領域番号 |
23244055
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
杉立 徹 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80144806)
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研究分担者 |
志垣 賢太 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70354743)
本間 謙輔 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40304399)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | クォーク物質 / フォトン物理 / ALICE実験 / クォークグルーオンプラズマ / QGP |
研究概要 |
本代表者が先行研究によりCERN研究所LHC加速器国際共同研究ALICE実験に建設導入した高分解能フォトン検出器PHOSを主要測定器として、陽子+陽子衝突実験及び陽子+鉛原子核衝突実験を実施した。並行してALICE実験将来計画に沿ってPHOS検出器高度化に向けた機器開発を行い、以下の成果を得た。 1) 平成24年2月から12月まで衝突エネルギー8TeVにおいて陽子+陽子衝突実験を遂行し、前年度までの統計量を圧倒的に上回る衝突データを収集した。PHOS検出器は冷却装置故障の約1ヶ月を除いて順調に稼働した。現在、本学院生が担当となり物理解析に向けたデータ解析処理の途中である。 2) 9月に核子対あたりの衝突エネルギー5TeVにて初めての陽子+鉛原子核衝突予備実験を行った後、翌年1月から4週間の本格的衝突実験を遂行し、約1.5億事象の衝突データ収集に成功した。現在、本学院生が中心となり試験的データ解析を先行させている。PHOS検出器3基のうち1基に想定以上の雑音成分が混入していることが判明した。原因究明と復旧を次年度に予定する。 3) 本研究により前年度策定したPHOS検出器高度化案を具体化するため、検出器読み出し技術開発研究を立ち上げた。開発中のSRU読み出し装置を国内に導入し、基本的な動作確認及び読み出し速度限界テストを行った。現行のRCUを使った読み出し方式に比較すると格段に高速化できるものの、期待した動作帯域には達せず、原因究明中である。 4) 広島大学に設置したALICE実験地域解析拠点では、約900のCPUコア及び180TBのディスクスペースを投入し、本年度収集した膨大な実験データの迅速で効率的な分散処理を分担した。同時に約400のCPUコアを配分した計算クラスターをわが国共同研究者に解放し、国内解析活動の活性化を支援した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) 本研究計画初年度(2011年)に収集したLHC加速器陽子+陽子衝突(7TeV)及び鉛+鉛原子核衝突(核子あたり2.76TeV)実験データの物理解析を主導し、PHOS検出器を主要測定器とした物理成果を含め複数の公表論文として発表した。 2) 本年度(2012年)にはLHC加速器陽子+陽子衝突(8TeV)及び陽子+鉛原子核衝突(核子対あたり5.0TeV)実験の高品位・高統計データの収集に成功し、PHOS検出器を主要測定器としたデータ解析も順調に進展している。 3) ALICE実験将来計画に含めるPHOS検出器高度化案を実証するため、新たなSRU読み出し技術の評価実験を国内に立ち上げ、初期結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
1) LHC加速器は第1期運用期間を終了し、平成25年2月から18ヶ月の長期保守期間に突入した。この間を利用しPHOS検出器の整備点検を徹底する。同時に第4モジュールを完成させ、第2期衝突実験再開時には4基に増強したPHOS検出器で臨む。本研究組織は当初計画通りPHOS整備増強に責任分担を果たす。 2) 同時にこの18ヶ月は、これまでに収集した膨大な実験データを徹底的に解析し尽くす絶好の機会である。フォトン及び中性中間子物理の推進に責任を担うPWG-GA組織を中心として組織的な解析作業を進める。本研究組織は当初計画通りPHOS検出器を使ったフォトン物理の導出に責任を担う。 3) LHC加速器高輝度化を踏まえてALICE実験組織は、中央測定器の50kHzデータ読出を可及的速やかに達成することを決定した。この動向を予期して本研究課題ではPHOS高度化実現の技術開発を進めてきたが、計画の前倒しが不可欠である。量産及び実装まで包括する新規プロジェクトとして立ち上げるため、研究計画最終年度前の応募も視野に入れながら加速する。
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