研究概要 |
本計画では,超短パルステラヘルツ(THz)電磁波の磁場成分とスピンの直接的な相互作用を利用して磁気秩序の制御とダイナミクスの研究を行う.23年度は,強力なTHz光源を実現するために高出力再生増幅レーザーシステム(パルスエネルギー4mJ)を購入し,運転に習熟した.一部光学素子の予期しない劣化が見つかるなどの問題もあるが,一応実用できる状態にある. さらにこれを励起源として,2つの方式のTHz光源の立ち上げを試みた. その第一は非線形光学結晶の光整流効果を用いるもので,回折格子による波面制御光学系を通してLiNO_3結晶に励起光を導入し,放射されたTHz波の波面をくずさずに効率よく試料に導くための光学系を作製し,性能を評価した.現状では目標より遥かに小さい出力しか得られていないので,引き続き最適化を試みる. その第二はレーザー電場による絶縁破壊で空気中に作られたプラズマにおける過渡的なイオン化電流を利用するものである.極薄型の2波長波長板を導入することにより,従来より出力を2倍程度改善することに成功し,現在投稿論文を執筆中である.集光点において光軸に平行な強い電場成分(400V/cm)を持ったTHz波の発生にも成功し,学会発表を行った. 試料に関しては,Erフェライトの単結晶を作製してスピン配列の温度変化をTHz-TDSで測定した.また,新たにBaフェライトを調達し,0.05THzという低周波におけるTHz-TDSの有効性を示した.これらについても学会発表を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2つの光源のうちプラズマを利用するものは,目標である1MV/cmまでは達していないが,実用レベルには達している.一方,非線形光学結晶を用いるものは,僅かに信号が出ている程度であり,引き続き最適化の作業が必要である.
|
今後の研究の推進方策 |
光源の最適化に関しては分担者が転出したため,共同研究体制を新たに組みなおすほか,新たに博士研究員の雇用を考えている.また大学院生の協力も得ることで,遅れを取り戻す予定である.そのほかの部分(試料の準備,評価,測定光学系の構築などは順調に進んでいるので,このまま継続する.
|