研究課題/領域番号 |
23244066
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
奥田 太一 広島大学, 放射光科学研究センター, 准教授 (80313120)
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キーワード | スピン分解光電子分光 / スピントロニクス |
研究概要 |
本研究では、平成19年度-21年度に基盤研究(B)「高効率スピン検出を用いた、スピン偏極光電子分光装置の開発」で開発し、これまでのMott型スピン検出器の100倍近い検出効率を実現した新型スピン検出装置を、広島大学放射光科学研究センターに設置された高分解能電子分光アナライザー(シエンタR4000)、真空紫外ビームライン(BL9B)、希ガス放電管式真空紫外光源などのリソースと組み合わせることにより、さらに高効率、多機能のスピン分解光電子分光装置へと装置を改良・高度化し、スピントロニクス応用への基盤となる物質群のスピン電子構造を詳細に解明することを目指すものである。 平成23年度は、現有のスピン検出器による測定で可能な物質表面の面内一方向(x)と面直方向(z)の計二方向のスピン検出に加え、あと一方向(y)のスピンも同時に検出することを可能にしてスピンの三次元解析を可能とするために、現有装置の改造に着手した。この改造においては、新たに一台のスピン検出器を設計・製作すると同時に、現有と新規作成する二台のスピン検出器のそれぞれに電子を導くための電子レンズ(電子変向装置)の設計・製作も行った。また、現有装置についても改良すべきところは同時に改良し、二台のスピン検出器を現在可能な最高性能を発揮できる最新型にするように旧装置の改造を行った。さらに、スピン検出用ターゲットを真空中で作製し、大気に出すことなく二台のスピン検出器に搬送できるようにするために、ターゲット作製装置の設計を行い、その製作も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は震災の影響で当初配分額が7割に減じられるという報道があったため、設計・製作の変更・中止などを検討せざるを得なかった。そのため装置設計が大幅に遅れることになった。その後矛算が満額配分されることになったため予定通りの性能がでるように設計をやり直し、何とか装置の製作まではこぎ着けたが性能評価には至っていない。しかしながら装置設計を延期している間に、当初は24年度行う予定だった測定の効率化やターゲット作製装置の設計などは前倒しで行うことができた。その結果トータルとしては、当初予定していた3年間の研究機関での達成目標の1/3程度は達成できたと考えられることから区分(2)に該当すると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は作製した新装置の組み立て、およびその性能評価を行う。当初予定の性能が達成されるように装置の立ち上げ作業を行っていく。また、測定の効率化を図るため測定ソフトの改良なども推進する。これらの立ち上げ、改良作業を行いながら、本装置を用いた物性研究を推進する。また23年度に当施設はドイツミュンスター大学と部局間協定を結び相互に共同して研究する体制を構築した。ミュンスター大学のドナート教授の研究室ではスピンを分離した非占有状態の電子状態の観測が可能な装置を有しており、本スピン分解光電子分光装置の性能を左右するターゲットの評価を行うことが可能である。そのためターゲットを改良してより高い性能を発揮することができるようにドナート教授と共同研究を行い、ターゲット用の最適試料探索も行っていく予定である。
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