研究課題/領域番号 |
23244066
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
奥田 太一 広島大学, 放射光科学研究センター, 准教授 (80313120)
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研究期間 (年度) |
2011-05-31 – 2014-03-31
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キーワード | スピン分解光電子分光 / 3次元スピン解析 / トポロジカル絶縁体 / ラシュバ効果 |
研究概要 |
前年度に増設した高効率スピン検出器の組み立てを実施した。それに伴い電子検出部分を本年度の予算で購入した。これらの設備の整備により3次元スピン検出装置の心臓部が完成した。その結果、実際に二台のスピン検出器を用いてx,y,z3方向のスピン成分を分離して計測することができることを確認した。また2台のスピン検出器のスピン検出能力の違いの補正や、各検出器でのエネルギー分解能の見積もり等を行い、実際の測定で必要となる重要な測定条件についての知見を得ることができた。 その後、この装置を用いて固体電子状態の波数空間での特定波数で三次元スピン観測・解析を実際に行い、装置が正確に駆動していることを確認した。また、3次元スピンマッピングの測定も試みた。その結果、測定は正しくできることが分かったが,現状の設備(ハードウェア及びソフトウェア)ではフェルミ面マッピング等の大量のデータを取得する測定では測定時間が予想よりも大幅にかかってしまうことが明らかになった。この点については次年度の課題として問題解決を図って行きたい。 平行して、装置を用いた物性研究も多数行った。主に多元系トポロジカル絶縁体のスピン構造観測、異方的なラシュバスピン分裂系の電子状態の観測等を行い、国内外学会発表,論文発表等を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題による装置開発は、既存の装置へスピン検出器を増設する形で行ったため、これまでのノウハウを十分に活用することが可能であるため、装置の基本動作を行う心臓部では計画調書を上回るペースで順調に進展している。一方、効率良くスピン3次元マッピング等を行うためには、特にソフトウェアの面で改善の余地があることが判明した。これは当初予想していなかったことであるが、次年度の課題として現在検討中で、充分解決は可能であると思われる。また、現状のシステムでも既に従来装置に比べ格段に高効率高分解能でのスピン分解光電子分光実験が可能となっており、次世代スピントロニクス材料として有力視されているトポロジカル絶縁体の新物質やラシュバスピン分裂を示す系についてのスピン電子構造測定を行い、学会発表や論文発表を行う等、研究成果があがりつつ有る。
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今後の研究の推進方策 |
上述の様に測定に使用するソフトウェアが、測定効率を最大限に発揮できる状態でないことが判明した。現在は複数の既成のソフトウェアをスクリプトを用いて外部制御することにより全体の自動測定を行っているが,効率的な測定に特化した新規の測定ソフトウェアを開発すればこの問題は解決できると考えている。従って次年度ではソフトウェアの改良とそれに伴うインターフェース等の整備を行う予定である。 一方装置の更なる安定動作と高効率化のためにスピン検出用のターゲットの安定作成法の確立、さらに、より効率の高いターゲットの探索を次年度は行う予定である。それによりさらに効率や性能の良い次世代スピン検出器開発に向けた重要な知見が得られると期待される。
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