研究課題
基盤研究(A)
世界的な高線束ビーム技術の発展をふまえた中性子散乱により、物質中での電子の局在-遍歴のデュアリティーなど多彩な強相関電子現象に迫る研究を進めている。本年度は以下の研究開発を行った。スピン偏極中性子散乱による磁気散乱での量子選択則を念頭に、3Heフィルター法(SEOP)中性子スピン偏極装置の構成品を調達して組み上げに着手した。さらにその装置によって核スピン偏極させたヘリウム3ガス中を中性子を透過させることで偏極中性子が生成するためヘリウム3も調達した。また原子炉装置での同手法のテスト実験の成果を論文発表した。この偏極装置を適用できるJ-PARC装置は公式に建設が承認され、具体的な設置の検討を開始した。また本研究における基盤設備のひとつである高分解能チョッパーの開発整備状況について国際会議で成果発表を行なった。高分解能分光器の性能を決めるフェルミチョッパーの高性能化のために、チョッパー回転体をボロン化した場合の回転中の応力計算を行ない、回転体のボロン材料の配置に関する情報を得た。希土類元素Pr化合物での強相関電子現象をもたらす4f電子と伝導電子との混成効果について、最近発見されたPrT2Zn20 (T = Ir, Rh, Ru)の重い電子状態を対象とする中性子散乱研究を行った。f電子の結晶場分裂準位間遷移が局在した電子の描像で理解できることを明らかにした。またRh系での未知の構造相転移に対して、磁気励起スペクトルからPrイオンサイトの点群対称性を提示した。鉄系超伝導体関連物質である Fe系超伝導体BaFe2Se3, CsFe2Se3 等(123系)を中心に磁気構造および磁気励起測定を行ない、この系での磁性の起源および超伝導の可能性を探索した。一方で Ba-122系に関しては Coドープ系の磁気励起の解析を進める事で Ba122系の磁気励起がRPAで説明できる事を示した。
3: やや遅れている
本課題が採択された平成23年度後半以来、主要な実験手法である中性子散乱を実施する計画であった日本原子力研究開発機構の研究用原子炉施設が震災後に再稼働していないため、進捗状況に若干の遅れがある。しかしながら、J-PARC加速器中性子施設や海外の中性子散乱施設を積極的に利用して、物質科学研究およびパルス中性子による偏極中性子装置や実験手法の開発検討を進めており、問題点を最小限にとどめている。
上記のような事情により、中性子散乱を行うための日本原子力研究開発機構JRR-3研究炉施設の利用に困難が残っているが、J-PARC加速器中性子施設や海外施設での共同研究や来年度の中性子研究課題申請を複数立案し、それらの課題の実施許可を得ている。これらに基づいた強相関電子系の物質科学研究をコンスタントに推進する。また、KEK-東北大連携によるJ-PARC内での偏極中性子散乱装置の建設が具体化して、本研究で開発する3Heフィルター法偏極装置を適用する段階が見えて来たので、その実用化を目標に定めた集中的な研究を進める。
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すべて 雑誌論文 (18件) (うち査読あり 18件) 学会発表 (32件) 備考 (1件)
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