研究課題/領域番号 |
23244070
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
前田 京剛 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (70183605)
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研究分担者 |
加藤 雄介 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (20261547)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マイクロ波顕微鏡 / 同軸共振器 / STM / 不均質伝導度 / トポロジカル絶縁体 / 鉄系超伝導体 / ギャップ方程式 / 準古典方程式 |
研究概要 |
(1)STM型のマイクロ波顕微鏡(11 GHz)を作製し,且つ,それを除震台付きの自作クライオスタット中に組み込んだ。(2)同システムを駆動するソフトウェアーを開発した。(3)同システムを室温,液体窒素温度で駆動し(a)トポロジカル絶縁体Bi2Se3(3)鉄系超伝導体Fe(Se,Te)エピタキシャル薄膜のトポグラフ像,複素マイクロ波応答像(Q値,共鳴周波数の両方)の二次元マップを取得した。空間分解能としては1 nmが達成されている。どちらの物質も,トポグラフ像に現れる凹凸が,Q値・共鳴周波数の両方にも反映されているのが現状であるが,それ以外の電気的な不均質性は観測されなかった。(4)部局の液体ヘリウム液化機更新と本機の完成が重なってしまったため,本報告書執筆中の今日現在液体ヘリウム中での測定はまだ一度も行っていないが,同じく本日デュワーの予冷を開始したので,数日後には液体ヘリウム温度における測定が開始される予定である。(5)不均質性が重要である試料として,KxFe2Se2の作製を開始した。(そのために必要な環境整備も行った。)(6) S波超伝導体の量子渦の直流ホール伝導度の微視的な計算を、一般化された準古典方程式、自己エネルギー方程式、ギャップ方程式、マクスウェル方程式を自己無撞着に解くことによって初めて達成した。(7) トポロジカル超伝導体;カイラルP波超伝導体の渦束縛状態に対する不純物効果をゴリコフ方程式で扱う手法を開発した。(8) (7)の手法を、トポロジカル超伝導系としての、半導体ー強磁性ー超伝導のヘテロ系に適用し、マヨラナ状態の断熱操作の条件を定量的に評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のもともとの計画は,(1)ナノメートルの空間分解能をもつ低温マイクロ波顕微鏡を作製し,(2)平均伝導度測定と併用しながら,(3)局所マイクロ伝導度測定を行い,(a)電子液晶の素励起のキャリヤダイナミクスを測定する(b)トポロジカル絶縁体の表面状態の素励起を調べる(c)磁束量子コアの内外の複素伝導度を分離して測定する というものであった。現状では,(1)(2)が達成され,(3)についての実験・測定が開始された状況である。本研究が採択された初年度,機種選択で失敗があったのと,東日本大震災による影響がメンバーにもあったことなどで,実質的なスタートが1年近く遅れてしまったが,その後機器製作が順調に進み,3年次の終わりにようやく測定ができるようになってきた。最終年次,(3)の部分を徹底的に推進することで,初期の目的を達成したいと考えている。 一方,理論面では,超伝導渦状態に対する複素伝導度の微視的計算の第一段階としてS波超伝導体の直流伝導度の微視的計算が達成できたために、進捗状況は良好と言えるが、d波その他異方的超伝導体の複素伝導度の計算のためにはさらに努力する必要がある と考えている。トポロジカル物質の伝導特性を調べる基礎として、電流散逸の起源としての不純物効果を複数のトポロジカル超伝導体に対して調べた。トポロジカル超伝導体に対しては必ずしもこれまでの標準的な手法だった準古典理論が適用できないためにゴリコフ方程式に立ち返って不純物効果、マヨラナ状態の特性を調べ得たことで、新年度にトポロジカル超伝導の電磁特性を調べる基礎ができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前項に記したように,研究のフェーズは,ひたすら局所マイクロ伝導度測定を行う部分に来ている。当初の(a)電子液晶の素励起のキャリヤダイナミクスを測定する(b)トポロジカル絶縁体の表面状態の素励起を調べる(c)磁束量子コアの内外の複素伝導度を分離して測定する に加えて,(d)不均質鉄系超伝導体の超伝導状態の研究を加えて,それから取り掛かっているところである。(d)(c)(b)(a)の順に,研究期間内には全てのサブジェクトを手がけられるようにしたいと考えている。また,理論面では,D波超伝導体に対して直流伝導度の微視的計算を一般化された準古典方程式、自己エネルギー方程式、ギャップ方程式、マクスウェル方程式を自己無撞着に解くこと、それを元に、複素伝導度の計算を目指す。さらに,トポロジカル超伝導体の伝導特性の微視的計算を目指す。
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