研究課題/領域番号 |
23244071
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大谷 義近 東京大学, 物性研究所, 教授 (60245610)
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研究分担者 |
新見 康洋 東京大学, 物性研究所, 助教 (00574617)
福間 康裕 独立行政法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (90513466)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スピン注入 / スピン蓄積 / 磁気抵抗 / 磁気相転移 |
研究概要 |
本研究課題では①純スピン流による微小磁性体発振励起と②スピン蓄積による局所相転移を発現させることを最終的な目的としている。両目的を達成するためには、スピンバルブ構造において銀細線中のスピン蓄積を可能な限り増大させかつ拡散伝導する集団スピンを制御性良く操作することが必須となる。 ①の課題に関しては昨年度までの研究で、銀ナノ細線中のスピン蓄積量を200倍強に増強する手法を確立した。効率的にスピンを微小磁性体に吸収させるためには、拡散伝導する集団スピンが微小磁性体位置に到達する際に向きを揃えている必要がある。この運動メカニズムの詳細を理解するために、スピン蓄積増強効果とハンル効果(集団スピンの歳差運動)測定を応用して、集団スピンの歳差運動とコヒーレンス(回転位相)の相関を明らかにする実験を行った。その結果、集団スピンの回転運動のコヒーレンスが、スピンの注入端子と検出端子の間の距離を増大させるとともに、改善すること。また、このコヒーレンスは、端子間距離をスピン拡散長で除して得られる規格化距離に対して整理すると細線に用いる物質の種類に依存せずに全て普遍な同一曲線上に乗ることを明らかにした。 ②に関しては、スピン蓄積を利用した局所相転移の候補物質としてFeRh反強磁性合金とFe-Ni強磁性合金超薄膜を用いた実験を開始した。FeRh薄膜に関しては、反強磁性・強磁性磁気相転移に伴う磁気抵抗変化に関する実験を完了し、スピン吸収実験を行う準備を整えたところである。Fe-Ni超薄膜については、キュリー温度が膜厚に依存して室温以下に低下することを実験的に確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究は、全体的におおむね順調に進んでいると言える。集団スピンの拡散伝導に関する基礎的な理解とその操作という観点については、昨年度開発した巨大スピン蓄積信号を利用することにより拡散距離と集団スピン歳差運動のコヒーレンスに関する詳細な知見を得る事ができた。これらの結果は、Scientific Reports誌に掲載発表され、良好な成果と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、昨年同様に、この巨大スピン蓄積を効率よくターゲット材料に非局所注入する実験を継続して展開する。具体的には純スピン流誘起磁化ダイナミクスの観測を目指す。スピンバルブ構造を構成する強磁性材料としてよりスピン偏極率の高いFe-Co合金なども検討して実験を遂行する。スピン蓄積による局所相転移に関する課題もより加速させて研究を進めたい。基礎物性を把握したFeRh合金を用いたスピン吸収実験を精力的に遂行する。
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