放射光X線回折を用いた精密解析を通して,強相関電子系物質の平衡状態の観測を行った。スピンと軌道の自由度が極低温まで凍結しない平衡状態を維持するという学術的に重要な量子液体状態を銅酸化物の構造物性研究によって得られた。この量子液体状態は,ヤン-テラー活性な二価の銅イオンにおいて数千度のエネルギー利得を得られる対称性の低下を抑えて実現しており,固体物理の常識を覆す大きな発見となった。更に,特異な結晶構造中の軌道分裂を利用した蛍光体の開発,希土類元素の含有量を極力抑えた40K級の転移温度を持つ鉄砒素系超伝導体の発見など,応用上も重要な新規物質開発に多大に貢献することが出来た。
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