研究課題/領域番号 |
23244075
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石田 憲二 京都大学, 理学研究科, 教授 (90243196)
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キーワード | 異方的超伝導 / 強磁性 / 反強磁性 / 重い電子系 / 鉄系超電導 / 共存・競合 / 核磁気共鳴実験 |
研究概要 |
本研究では、磁気相近傍で出現する非従来型超伝導に見られる、磁性と超伝導の共存・競合の様子を微視的実験から明らかにすることを研究目的にしている。また、磁気相と超伝導の関係を考察することにより、非従来の超伝導発現機構を解明する。今年度は、U系強磁性超伝導体と鉄砒素超伝導体において研究を行った。 (1)強磁性超伝導体UCoGeにおける強磁性揺らぎと超伝導 我々は、2007年の発見当初からUCoGeの研究を行ってきている。現在までの我々のNMR/NQRの研究から、超伝導は強磁領域で起こっており微視的に見て共存すること、両現象はU-5f電子に起因することを突き止めた。さらにこの物質はc軸方向に強磁性イジング揺らぎを持っていることも明らかにしている。今年度はこの強磁性イジング揺らぎと超伝導の関係を、緩和率の角度依存性から調べた。強磁性イジング揺らぎは、c軸と直行するa,b軸方向の外部磁場に対しては影響を受けないが、磁場をc軸方向に傾けていくと緩和率は急激に抑制され、c軸方向の磁場成分でチューニングされることがわかった。超伝導の上部臨界磁場も強い異方性を示し、c軸方向の磁場に対して強く抑制される。したがって、c軸方向の磁場に対して強磁性イジング揺らぎと超伝導の上部臨界磁場をプロットすると、強磁性イジング揺らぎが強い磁場領域においてのみ超伝導が現れており、両者にプラスの相関があることを実験的に示した。この結果は強磁性揺らぎが超伝導の発現機構に関係している実験的証拠であり、期待される超伝導はスピン三重項超伝導である。 (2)鉄砒素超伝導体BaFe_2(As_<1-x>P_x)_2における磁性と超伝導の共存・競合 .同価数元素置換系BaFe_2(As_<1-x>P_x)_2(x~0.25)において磁気相と超伝導の関係をP-NMRより微視的に調べた。x=0.25の試料では共鳴線の増大からT_N=56Kで磁気秩序状態にあることが示され、磁気秩序領域の緩和率の測定からT_c^*~14Kで超伝導転移することも示された。この結果は、磁性と超伝導が空間的に共存しながらも秩序変数同士が競合関係にあることが明らかになった。またこのような微視的共存/競合状態が実現するには、鉄系超伝導の対形成機構に理論的制約を課すことも議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたBaF_2(As_<1-x>P_x)_2における磁性と超伝導の共存・競合状態の解明については、順調に研究が進み論文として発表することが出来た。しかし明らかとなった磁性と超伝導の共存状態は当初考えていたものよりも複雑であり、今後更なる研究が必要であることもわかった。今後本研究で重要と考えている圧力下の実験を進めていき、物理parameterを詳細に変化させていったときの磁気相から超伝導相にどのように移り変わっていくのかを調べて行きたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は順調に進んでいる。現段階では研究計画の変更や問題点はないが、今後問題が生じれば早急に対処したい。
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