本研究は、光量子メモリに関し、λ型原子の2つの基底状態間に状態を転写するという理論提案を、ダイヤモンド窒素欠陥(NV)中心と、低損失で高いQ値を有するファイバ結合微小共振器を組み合わせた系により実現を目指すものである。これまでに、特定の基板上のダイヤモンドナノ結晶中のNV中心からの、鋭い共鳴ピークとフォノンサイドバンド抑制の発見(Optics Express2012)、ファブリペロ型共振器を用いた、1.2GHzという非常に狭い線幅のゼロフォノン線の発光の観測に成功している(Optics Express2013)。また、ダイヤモンド窒素欠陥中心とファイバ結合微小球を組み合わせたデバイスを実現(Optics Express 2012)、ファイバ結合微小球共振器の極低温下(10K以下)制御にも成功した(Optics Express 2012)。 平成25年度および26年度の計画延長では、光検出磁気共鳴(ODMR)実験系の構築を行った。その結果、テーパー光ファイバに結合させたダイヤモンドナノ粒子中のNV中心のODMR信号の取得に成功した(論文準備中)。ナノ光ファイバとNV中心の結合条件についても、電磁界数値解析により明らかにした(Optics Express 2014)。また、ナノ光ファイバ中に、収束イオンビームを用いて微小共振器を形成した「ナノファイバブラッグキャビティ(NFBC)」の実現に成功、該デバイスが、従来の固体微小共振器には見られない、可視光域で20nmにも及ぶ共鳴波長制御が可能であることを実証、さらに単一発光体を結合させたハイブリッドデバイスにおいて、共振器量子電磁気学的効果による2.7倍の発光強度増強の観測にも成功した(Scientific Report 受理2015)。以上のように、光量子メモリの実現に向けた様々な研究成果を得た。
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