研究課題/領域番号 |
23244082
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
畠山 温 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70345073)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2015-03-31
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キーワード | 原子 / 表面 / スピン偏極 |
研究概要 |
本年度前半は,前年度作製したしたエックス線光電子分光装置を核とした実験装置の性能評価を行った。エックス線光電子分光自体の動作を確認した後,アルカリ金属を堆積させるアルカリディスペンサーシステム,光誘起脱離を引き起こす光源の光学系,脱離してくるアルカリ原子を検出する高感度検出器系の作製と動作確認も行い,光誘起脱離実験が行うことができる実験装置が完成した。その装置を用い本年度の後半では,ガラス基板に堆積させたアルカリ金属原子の光誘起脱離現象の研究を進めた。これまでの研究で問題だった表面状態の不確かさが,エックス線光電子分光を使ったその場表面分析により大幅に低減された。また,新たに導入したアルカリ原子検出器により,脱離原子を高感度に検出できるようになった。その結果,光誘起脱離は熱脱離が起こりやすい状況で,しかも2種類の異なる状況で起こっていることを示唆する実験結果が得られた。 上記表面実験と並行して,表面微細周期構造と原子の相互作用で引き起こされる共鳴遷移を利用した原子操作法の研究を行った。今年度は主に,透過型の周期構造物と原子の相互作用による共鳴遷移の研究を行った。周期構造物としては,微細加工した透過型回折格子に強磁性体を蒸着したものを作製する。面内磁化と垂直磁化の両方が可能なCoCoO磁性薄膜を回折格子の周期300μmの回折格子に蒸着し実験したところ,両者で原子の共鳴スペクトルが著しく異なることを見出した。理論計算と比較し解析することにより本質を理解することができ,今後の周期の微細化実験につなげることができた。 その他,アルカリ気体原子の抗スピン緩和コーティングの研究を,上述のエックス線光電子分光装置などを使った表面分析と,スピン緩和時間測定を組み合わせて開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度遅れ気味だった装置開発が完了し,本年度からデータの取得が本格的に始まった。ただちに研究の問題解決の糸口がつかめており,2年目としては妥当な進展状況であると言ってよい。
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今後の研究の推進方策 |
3年目である次年度は本年度つかんだ問題解決の糸口をいかして,いくつかの具体的な成果を得ることを目標にする。具体的には,アルカリ金属原子の光誘起脱離の起きる条件(堆積量,光波長,光パワー,温度など)の特定,表面微細周期構造と原子の相互作用で引き起こされる共鳴遷移における周期のさらなる微細化,そして,アルカリ気体原子の抗スピン緩和コーティングの緩和防止性能とコーティング表面状態の関連づけ,である。 最終年度である次々年度は,これらの研究成果を統合し,固体表面における新しい原子操作技術の実証につなげる。
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