研究課題/領域番号 |
23244083
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
田沼 肇 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (30244411)
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研究分担者 |
中村 信行 電気通信大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (50361837)
岡田 邦宏 上智大学, 理工学部, 准教授 (90311993)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 原子・分子物理 / X線天文学 / 化学物理 / 太陽物理学 |
研究概要 |
田沼(首都大)は酸素や炭素の裸の多価イオンを太陽風速度程度の低速イオンビームとして準備して,気体標的との衝突で発光する軟X線スペクトルを半導体検出器によって観測した。発光断面積の絶対値についても予備的なデータが出始めている。また,イオンビーム強度の変化から電荷移行断面積の絶対値を測定する装置を完成させ,幾つかの多価イオンと標的気体の組み合わせについて測定を行った。報告値のある系では測定結果がほぼ一致し,信頼性の高いデータを系統的に測定できる目途が立った。 中村(電通大)は昨年度製作した平面結像型凹面回折格子分光器の試験を行った。小型電子ビームイオントラップ装置に接続し,多価イオンからの5~30nm領域の発光を観測することで,分光器の分解能および効率の試験を行った。その結果,分解能は0.018nmと設計当初の性能が達成されていることを確認した。また,既存の分光器と信号強度を比較することにより効率を試験した結果,ミラーの集光効率も設計当初の性能が満たされていることが確認できた。今後,短波長領域(1~5nm)において同様の試験を行った後,首都大のビームラインに移設し測定を行う。 岡田(上智大)は小型ECRイオン源と平成23年度に完成させたKingdonイオントラップを用いてアルゴン多価イオンのトラップ実験を行い,加速電圧4kVの実験においてAr2+,Ar4+のトラップ信号を確認することができた。真空度約2×10-7PaにおけるAr2+, Ar4+イオンのトラップ寿命は,それぞれ約40秒,約3秒であった。多価イオンのトラップ寿命は真空度に依存する。今後,水素分子に対して圧縮比の高い真空ポンプを用いることにより,1桁程度のトラップ寿命の向上が見込まれる。外部入射多価イオンのトラップ実験に成功したことにより,O6+多価イオンのトラップ及び禁制X遷移寿命測定への目処がついたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
首都大では,多価イオン生成用イオン源,ビーム輸送系,および衝突実験装置が完成し,予備的な測定データが得られている。電通大では分散型分光器がほぼ完成し,分解能やミラーの集光効率について試験も済んでいる。また,上智大で開発したイオントラップも低価数イオンの蓄積に成功し,基本動作が確認されている。ほとんど計画通りで,当初の目的を達成できていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
首都大・電通大・上智大の三カ所でそれぞれが平行して計画に沿って着実に装置開発を進めており,それぞれの装置に関する予備実験が完了したので,H25年度内には首都大に全ての装置を移設する。分光器は今年の夏に移設し,半導体検出器では不可能だった発光線を分離した軟X線スペクトルの取得を行う。イオントラップの移設は秋を予定しており,年度内に予備的な多価イオン蓄積実験と禁制線の観測に挑戦する。 お互いにそれぞれの進捗状況を把握して,議論しながら課題を推進するためのミーティングを適宜行っていく。
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