研究課題/領域番号 |
23244084
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
佐々田 博之 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (30146576)
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研究分担者 |
稲場 肇 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (70356492)
吉田 尚弘 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (60174942)
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キーワード | 超精密測定 / 量子エレクトロニクス / 原子・分子物理 / 環境分析 / 分子分光 / 光周波数コム / デュアル・コム / 同位体 |
研究概要 |
代表者(慶應)は狭線幅の1.06μmNd:YAGレーザーと広い同調波長域をもつ1.5μm帯外部共振器型半導体レーザーとの差周波発生により3μm光を得、光共振器吸収セルに入射し線幅約200kHzのサブドップラー分解能スペクトルを得た。中赤外光の同調範囲88.2~90.5 THzにあるCH4のnu3バンドの遷移周波数をおよそ2kHzの不確かさで56本測定した。また、分光計の感度が高いため13CH4の許容遷移と12CH4の禁制遷移が4本含まれている。これらはFTIRで求められたデータベースHITRAN2008やデュアルコム分光による測定精度を一挙に2桁以上改善した。一方、スペクトル分解能を高めるために準備していた新たな光共振器吸収セルは、ミラーの反射率のスペックが出ず納入が遅れた。 稲場(産総研)狭線幅コムを実現するため、共振器中に電気光学変調器が挿入された高速制御可能なファイバーコムを製作した。光アンプ系の一部を製作し、オフセット信号、および波長1.5 um帯レーザーとのビート信号を観察し、フリーラン時の線幅が狭線幅化に問題ないレベルであることを確認した。一方で、狭線幅コムの基準となる波長1.5 um帯レーザーの線幅狭窄化の準備を行った。高安定光共振器の性能を最大限に発揮させるため、周辺の振動や音響雑音を遮断する防音遮蔽箱を選定・調達した。 吉田(東工大)は東工大に差周波数発生光源を用いた分光装置を移設し調整・立ち上げを行った。測定例の無い、天然ガス由来のメタンの2重置換同位体種13CH3Dの本装置による同位体比測定結果について、質量分析計による13C、Dの測定結果と熱平衡から予測される値と比較し考察し、測定と合わせて国際誌に論文投稿した。2重置換同位体種としてメタンとCO2について検討を行い、学会発表および論文投稿を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
代表者(慶應)は狭線幅の1.06μmNd:YAGレーザーと広い同調波長域をもつ1.5μm帯外部共振器型半導体レーザーとの差周波発生により3μm光を得、光共振器吸収セルに入射し線幅約200kHzのサブドップラー分解能スペクトルを得た。中赤外光の同調範囲88.2~90.5 THzにあるCH4のnu3バンドの遷移周波数をおよそ2kHzの不確かさで56本測定した。また、分光計の感度が高いため13CH4の許容遷移と12CH4の禁制遷移が4本含まれている。これらはFTIRで求められたデータベースHITRAN2008やデュアルコム分光による測定精度を一挙に2桁以上改善した。一方、スペクトル分解能を高めるために準備していた新たな光共振器吸収セルは、ミラーの反射率のスペックが出ず納入が遅れた。 稲場(産総研)は高速制御可能なファイバーコムを製作した。光アンプ系の一部を製作し、オフセット信号、および波長1.5 um帯レーザーとのビート信号を観察し、フリーラン時の線幅が狭線幅化に問題ないレベルであることを確認した。一方で、狭線幅コムの基準となる波長1.5 um帯レーザーの線幅狭窄化の準備を行った。高安定光共振器の性能を最大限に発揮させるため、周辺の振動や音響雑音を遮断する防音遮蔽箱を選定・調達した。これらから、計画は概ね順調に進んでいると考えている。 吉田(東工大)は東工大に差周波数発生光源を用いた分光装置を移設し調整・立ち上げを行った。測定例の無い、天然ガス由来のメタンの2重置換同位体種13CH3Dの本装置による同位体比測定結果について、質量分析計による13C、Dの測定結果と熱平衡から予測される値と比較し考察し、測定と合わせて国際誌に論文投稿した。2重置換同位体種としてメタンとCO2について検討を行い、学会発表および論文投稿を行った。これらから、計画は概ね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
代表者(慶應)は周波数変調分光法を導入し、周波数コムを基準に光源の周波数掃引を行う。これにより、信号の小さいスペクトル線もその遷移周波数を数kHzの不確かさで決定できる。また、差周波発生用にLバンドのファイバーアンプと新たな導波路型PPLNを導入し分光計の同調波長範囲を広げる。これにより、12CH4のnu3バンドの遷移周波数測定範囲をRブランチまで伸ばし、分子遷移周波数のデータベースを大きく改善する。また、禁制遷移を多数測定することにより、振動基底状態の回転定数を精密に決定する。また、納入された新たな光共振器吸収セルのミラーの反射率のスペックを調べ高いフィネスを達成する。これにより、100 kHzを割る分解能と高感度を目指す。 稲場(産総研)は波長1.5 μm帯用の高安定光共振器に半導体レーザーを安定化する。共振器の分散の設計値がゼロとなる波長を選び、レーザー光を共振器に結合させる。次に、今年度製作した狭線幅コムを用い、既存の高安定レーザーとのビート信号を観察し、周波数安定度、および線幅を測定する。本研究の目標を10kHz以下を達成するために調整を行う。 吉田(東工大)は2重置換同位体種としてメタンとCO2について検討を行う。メタンについては環境試料についての計測を行い、学会発表するとともに国際誌に論文投稿する。またISI2012(アイソトポマー国際会議)(US, 6月)などで学会発表を行う。
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