研究課題/領域番号 |
23244084
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
佐々田 博之 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (30146576)
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研究分担者 |
吉田 尚弘 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (60174942)
稲場 肇 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (70356492)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 超精密測定 / 量子エレクトロニクス / 原子・分子物理 / 環境分析 / 分子分光 / 光周波数コム / デュアル・コム |
研究概要 |
代表者(慶應)は差周波発生により3μm光を得、光共振器吸収セルに入射し線幅約200kHzのサブドップラー分解能スペクトルを得た。Lバンドのファイバーアンプと新たな導波路型PPLNにより、中赤外光の同調範囲が88.2~90.5 THzから86.7~93.1 THzにまで広がり、12CH4のnu3バンドの遷移周波数をおよそ3kHzの不確かさで150本測定した。また、分光計の感度が高いため禁制遷移も21本観測され、振動基底状態の回転定数を従来より39倍高い相対不確かさで決定した。以前の測定と併せた204本の遷移周波数が精密に決定され、これらは権威ある分子遷移周波数のデータベースHITRAN2012に掲載されることになっている。また、スペクトル分解能を高めるために準備していた新たな光共振器吸収セルに取り付けられたミラーの反射率のスペックを確認された。 稲場(産総研)は波長1.5 μm帯用の高安定光共振器に半導体レーザーを安定化した。波長として共振器の分散の設計値がゼロとなる1535 nmを選び、レーザー光を共振器に結合させた。次に、昨年度製作した狭線幅コムを用い、既存の高安定レーザーとのビート信号を観察し、周波数安定度、および線幅を測定した。その結果、周波数安定度として1~1.5 x 10^-14@1 s、10 Hz以下の線幅を得た。これは本課題目標である10 kHzに余裕を持って対応できるものであり、十分な性能が得られている。 吉田(東工大)は2重置換同位体種としてメタンとCO2について検討を行った。メタンについては環境試料についての計測を行い、学会発表するとともに国際誌に論文投稿した。またISI2012(アイソトポマー国際会議)(US, 6月)などで学会発表を行った。実験室のある建物が半年間の耐震改修工事中のため実験等はあまり進展しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表者(慶應)は差周波発生により3μm光を得、光共振器吸収セルに入射し線幅約200kHzのサブドップラー分解能スペクトルを得た。12CH4のnu3バンドの遷移周波数をおよそ3kHzの不確かさで150本測定した。また、分光計の感度が高いため禁制遷移も21本観測され、振動基底状態の回転定数を従来より39倍高い相対不確かさで決定した。以前の測定と併せた204本の遷移周波数が精密に決定され、これらは権威ある分子遷移周波数のデータベースHITRAN2012に掲載されることになっている。また、スペクトル分解能を高めるために準備していた新たな光共振器吸収セルのミラーの反射率のスペックが確認された。分解能向上では少し遅れているが、従来の分光データをはるかに上回る精度のデータを供給し概ね順調に進んでいる。 稲場(産総研)は波長1.5 μm帯用の高安定光共振器に半導体レーザーを安定化した。レーザー光を共振器に結合させ、昨年度製作したコムを用いて既存の高安定レーザーとのビート信号を観察し、周波数安定度、および線幅を測定した。その結果、周波数安定度として1~1.5 x 10^-14@1 s、10 Hz以下の線幅を得た。また、この方法を用いて、光格子中のYb原子の分光実験を行い、約20 Hzの線幅観察に成功した。これは本課題目標である10 kHzに余裕を持って対応できるものであり、十分な性能が得られている。これらのことから、計画は概ね順調に進んでいると考えている。 吉田(東工大)は2重置換同位体種としてメタンとCO2について検討を行った。メタンについては環境試料について計測を行い、学会発表するとともに国際誌に論文投稿した。またISI2012(アイソトポマー国際会議)(US, 6月)などで学会発表を行った。実験室のある建物が半年間の耐震改修工事中のため実験等はあまり進展しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
代表者(慶應)は今年度は光共振器吸収セルのビーム半径を0.7 mm から2 mm以上に拡大してtransit timeを伸ばし、同時に試料気体の圧力を下げて線幅100kHz以下のスペクトルを観測する。また、世界原子時に同期した光コムに外部共振器半導体レーザーとYAGレーザーを周波数安定化し、さらに、光音響変調器で1.5 μm光を周波数掃引するスペクトル記録法を導入する。これにより、周波数連続掃引可能範囲が100MHzまで広がると期待される。一方、分担者(産総研)と協力して中赤外領域のデュアルコムを作り、ドップラー分解能、高感度、高精度、高速、広帯域な分子分光を行う。 稲場(産総研)はこれまでにないスペクトル分解能を持つ波長3 μm帯の光源を作り、実際の分光に用い、装置の有効性・実用性等について実証・評価を行う。具体的には、まず、波長1064 nmの狭線幅レーザーに、昨年度までに開発した高速制御型光コムを位相同期し、狭線幅コム(いずれも線幅100 Hz以下)を発生させる。これに波長1.5 μm帯のレーザーを位相同期し、狭線幅化する。1064 nmレーザーまたは1.5 μm帯レーザーを周波数掃引することにより、差周波数光(波長3.4 μm)の周波数を掃引する。また、代表者(慶應)と協力して中赤外領域のデュアルコムを作る。このためには産総研で開発した狭線幅コムが必須である。 吉田(東工大)は、代表者(慶應)と分担者(産総研)が開発した分光計を使ってメタンの希少同位体の観測を行い、分光計の評価を行う。
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