研究課題
研究代表者の瀬戸は、研究協力者の長尾、貞包とともに、主に中性子小角散乱を用いて研究を進めた。対象とした物質系は3メチルピリジン(3MP)などの有機溶媒と水の混合系と非イオン性界面活性剤水溶液系で、これらに陽イオンと陰イオンの溶媒和効果が大きく違う「拮抗的塩」を加えた場合に形成されるナノ構造を調べた。この結果、3MPを水の混合系に拮抗的塩の一種であるテトラフェニルホウ酸塩を加えた場合に見られた電荷密度波構造やラメラ構造が、物質の種類によらずに現れる一般的な現象であることを示した。またこの時に表れるラメラ構造が、拮抗的塩を構成するイオンのheterogeneousな分布による長距離相互作用によって安定化されることを示した。更に非イオン性界面活性剤水溶液においては、拮抗的塩を加えることによって相図が大きく変化することを明らかにした。研究分担者の小貫は、選択的水和効果による相分離現象の研究をした。特に僅かの塩や疎水性不純物により水油系に相分離が引き起こされることを理論的に予言した。また2成分混合溶液中でのコロイド間の相互作用を研究した。その詳細な計算により、コロイド周辺で組成の不均一が重要であることを示した。研究協力者の荒木は、二相液体における荷電粒子の振る舞いを数値シミュレーションによって調べた。通常、荷電粒子は誘電率の高い水を多く含む相を好むが、荷電粒子表面を疎水化したり、疎水性塩を添加することで、界面に吸着させたり、油相側に移動しうることを見出した。また、微小量の水滴を含んだネマチック液晶相に電場を掛けたときの振る舞いについても調べた。二相の誘電率の違いにより、水滴周りでは配向場が乱されることが分かった。この効果は、塩濃度によってさらに増大する。
3: やや遅れている
初年度末に起きた大震災の影響により、原子力機構の研究用原子炉JRR-3が停止を余儀なくされ2年経った現在でも再起動の目処が立っていない。これにより中性子小角散乱実験が一時的に行えない状況となったが、昨年度よりJ-PARCにおいて中性子小角散乱実験が行えるようになったことと、海外での実験を積極的に行うようにしたことで遅れを取り戻しつつある。
中性子小角散乱実験は、アメリカ、ドイツなどの海外施設の利用とJ-PARCにおける実験により進める。またJRR-3が再起動した場合には、そこの装置も併用する。
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