研究課題/領域番号 |
23244092
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大久保 修平 東京大学, 地震研究所, 教授 (30152078)
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研究分担者 |
田中 宏幸 東京大学, 地震研究所, 准教授 (20503858)
今西 祐一 東京大学, 地震研究所, 准教授 (30260516)
田中 愛幸 東京大学, 地震研究所, 助教 (90508350)
寺家 孝明 国立天文台, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (40425400)
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キーワード | 観測手法 / 宇宙線透視 / 重力 / 火山 / 地震 |
研究概要 |
有珠山と桜島において、宇宙線ミューオンを用いた火山の透視観測を実施し、それぞれ1方向からの画像を取得した。とくに有珠山におけるミューオン観測については、従来型のセンサーを改良したカロリメーター方式のセンサーを試作し、期待通りの雑音低減効果を確認した。その結果、従来方式に比べて観測に要する時間を数分の1に抑えることができることとなり、1台のミューオン観測装置を有効に使えるようにしたという意義がある。これにより、今まで以上に多くの火山を観測できる道が開かれたという重要性をもつ。 さらに昭和新山において重力異常を測定し、過去にミューオンで得られた2次元密度画像と合わせて統合解析を実施し、学会発表した。これはミューオン観測による密度構造を、それとは独立な手法である重力観測を用いて検証したという意義がある。さらに、ミューオンだけでも、重力だけでも、3次元密度構造を一意には決定できないという従来の難点を、両者の統合インバージョンにより克服した点で大きな意義をもつ。 ボアホール用のミューオン観測センサーのプロトタイプを製作し、東大構内の地下水位観測井を利用して耐久性の検討や埋設ノウハウを蓄積した。 桜島及び霧島火山における絶対重力観測を通年連続観測した。高精度重力にとってノイズとなる、降雨や地下水起源の重力擾乱を除去するための、地下水流動ソフト(重力計算ルーチン組込)の高度化を進め、それを用いて重力データを補正した。このデータと、先に述べたミューオン透視画像で得られた、火山の火道形状を用いて、マグマ頭位を計算した。この研究は、地下水補正を施した連続重力観測データが、火山の火道内マグマの状態推定に有効であることを示したという点で、重要な成果といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
火山のイメージングについては、計画通り有珠山と桜島においてミューオン観測を実施し、それぞれ1方向からの画像を取得できた。さらに昭和新山において重力異常を測定し、ミューオンで得られた2次元密度画像と合わせて統合解析を実施し、学会発表した。 計画に従って、ボアホール用宇宙線観測装置の開発については、ボアホール用ミューオン観測センサーのプロトタイプを製作した。東大構内の地下水位観測井を利用して耐久性の検討や埋設ノウハウを蓄積した。 桜島及び霧島火山における絶対重力観測を通年連続観測した。ただし、桜島については、平成23年9月の豪雨により、並行観測していた土壌水分計が埋没したり、停電による重力計の故障など不可抗力により、研究が中断されたため、研究の一部を平成24年に繰越したものの、所期のデータを取得することができた。これを用いた研究成果は学会誌に受理され、平成25年4月に刊行されている。 以上により、当初計画はほぼ順調に達成された。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に取得した霧島火山の重力データに基づく、火山活動の定量的モデリングを進める。また、同火山の宇宙線ミューオンによるイメージングの可能性を検討し、可能ならば、次年度以降に実行する。 重力連続データの高品位化のため、地下水補正の高度化にさらに努める。また、桜島火山について、他の地球科学的観測量も可能な限り、統一的に説明するモデルをつくる。活発な活動を続ける桜島火山については、今後も連続重力観測を継続する。 ミューオンセンサーの開発については、ボアホール観測の実用化を目指した開発研究を継続する。また、それとは別に地上設置の低雑音型ミューオンセンサーの一層の高度化に関する開発研究も継続する。
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