研究課題/領域番号 |
23244092
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大久保 修平 東京大学, 地震研究所, 教授 (30152078)
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研究分担者 |
田中 宏幸 東京大学, 地震研究所, 教授 (20503858)
今西 祐一 東京大学, 地震研究所, 准教授 (30260516)
田中 愛幸 東京大学, 地震研究所, 助教 (90508350)
武多 昭道 東京大学, 地震研究所, 助教 (30589271)
寺家 孝明 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 助教 (40425400)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 観測手法 / 宇宙線透視 / 重力 / 火山 / 地震 |
研究実績の概要 |
前年度までに開発した低雑音ミューオン透視観測装置を霧島山新燃岳火口から南に5.0 kmの位置に設置し、新燃岳火口の下を観測した。現火口底の表面地形は航空機合成開口レーダーで詳細に調べられており、火口底の一部が陥没していることが報告されている。一方、今回のミューオン観測からは、表面だけではなく、 2011年噴火の噴出孔の直下に低密度部分が発見され、マグマのドレインバックを示唆する結果を得た。 また、前述の低雑音ミューオン透視観測装置を桜島昭和火道から約2kmの点に移設し、活動が活発化している桜島火山のイメージングのためのデータ蓄積をすすめた。桜島では絶対重力観測も行い、平成26年4月以降平成26年11月までほとんど欠測のない重力時間変動データを得た。暫定的なミューオン透視画像から得た火道径を用いて、重力変動からマグマ頭位を推定したところ、噴火活動との対応が認められつつある。 重力変動には、火山活動に由来するもの以外に、降雨等による土壌水分変化に由来する重力変化も含まれる。火道の構造変化を高精度に見積もるためには、後者を適切に計測し、重力変化全体から除去する必要がある。そのため、観測点近傍の地下水位データを入手するとともに、前年度に開発した電磁成分測定出器の改良を行い、桜島において本格観測を開始した。地下水位データについては、潮汐周期帯で水位変動が重力変動と同期していることが分かり、観測された水位変動が不圧帯水層の変動に由来することが判明した。後者は、地表に降り注ぐ宇宙線に含まれる電子・陽電子・ガンマ線(電磁成分)に着目し、厚さ数十m程度の比較的薄い構造物の透視に適しているという特性を利活用するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低雑音ミューオン透視観測装置の霧島山新燃岳での実証観測を成功させたことにより、多くの噴火事象において安全とされる、火口から5㎞はなれた位置からのミューオン透視観測が可能となることが示された。その結果、これまで観測が出来なかった噴火中の火山にも適用できるようになり、実際、分厚い山体をもつ桜島火山への適用に踏み切ることができた。 桜島の重力観測点における地下水位データ等から、地下水変動に起因する重力擾乱を補正手法が開発されつつある。暫定的な補正を、桜島での絶対重力連続観測データに施したところ、2014年9月~10月に生じた、半日程度のタイムスケールのやや大規模な地殻変動(火口方向隆起)に同期して、火道内マグマの頭位変動から期待されるV字型の重力減少・増加が、重力観測データからも確認された。これは重力データの高品位化によって、浅部火道内のマグマ上昇が適切に解釈できる道をひらいたものと評価できる。また、地下水位とは別に、不飽和層の土壌水分を、宇宙線電磁成分の計測にもとづいて補正する展望も開け、重力データの一層の高品位化も射程にはいってきた。 以上により、当初計画はほぼ順調に達成された。
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今後の研究の推進方策 |
桜島火山のミューオン透視観測は、同火山が分厚いため、さらに観測を継続してミューオン透過数を蓄積する。その一方で、同火山の噴火や爆発が多数回に上ることを利用して、噴火・爆発前後のミューオン透過数の時間変動をスタックすることも検討する予定である。
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