研究課題/領域番号 |
23244102
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
池原 実 高知大学, 教育研究部自然科学系, 准教授 (90335919)
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研究分担者 |
三浦 英樹 国立極地研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (10271496)
中村 恭之 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 研究員 (60345056)
菅沼 悠介 国立極地研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (70431898)
河潟 俊吾 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (90244219)
野木 義史 国立極地研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (90280536)
岩井 雅夫 高知大学, 教育研究部自然科学系, 准教授 (90274357)
大岩根 尚 国立極地研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (80581363)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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キーワード | 南大洋 / 南極 / 海氷 / セディメントウェーブ / IRD / 酸素同位体比 / 珪藻 |
研究概要 |
COR-1bPCから浮遊性有孔虫を拾い出し,酸素同位体分析を行うとともに,13層準にて14C年代測定を行い,年代モデルをほぼ確定させた。また,有孔虫が産出しないため有機炭素14C年代測定によって年代推定を行っていたLHB-3PCとLHB-4bPCについて追加の有機炭素14C年代測定を行い,前年度までの年代モデルを補強した。 コンラッドライズのCOR-1bPCコアを中心に古環境変動復元分析を進めた。高緯度海洋における氷山・海氷の指標として使われている漂流岩屑(ice-rafted debris: IRD)を拾い出し,火山ガラスやパミスなどの火山性IRDとその他のIRDとに分類した後,それぞれの粒子数と重量を計測した。また,一部のIRD粒子については,電子プローブマイクロアナライザによる主要元素分析を行い,起源の推定を行った。その結果,火山灰起源の粒子を除いたIRD岩片は,完新世ではほとんど産出しないが,約16ka以前の最終融氷期初期から最終氷期にかけて定常的に産出した。乾燥堆積物1g当たりのIRD産出数は,数千年スケールで周期的に増加する傾向を示した。IRDの起源の多くは南極大陸ではなくサウスサンドイッチ諸島起源の火山噴出物であることが判明した。よって,コンラッドライズにおけるIRDおよび海氷珪藻種の増大イベントは,最終氷期から最終融氷期初期にかけて周期的に海氷分布域が拡大する寒冷化イベントが南大洋インド洋区で繰り返し起こっていたことを示す。 9月には東京大学にて研究集会を,3月には高知大にてワークショップを実施し,本研究を主体とした研究成果のとりまとめと今後の課題の整理を行った。コンラッドライズのセディメントウェーブに関する成果は,国際誌論文としてまとめて投稿準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コンラッドライズのコアの古環境復元が進行し,最終氷期に周期的に海氷分布が拡大縮小を繰り返していたことが明らかとなりつつあり,一定の成果をあげてきている。また,セディメントウェーブに関する成果は国際誌へ投稿直前の状態である。よって,本研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
予察分析の段階であるデルカノライズコア(DCR-1PC)から浮遊性有孔虫および底生有孔虫を連続的に抽出し,炭素酸素同位体比分析を行い,酸素同位体層序を確立する。また,浮遊性有孔虫の放射性炭素年代測定を行い,コアの年代モデルを補強する。 各種の古環境指標(プロキシ)の分析を行い,南大洋における表層環境変動を詳細に復元する。特に,漂流岩屑(IRD),珪藻群集,浮遊性有孔虫群集により,極前線,亜南極前線,冬季海氷北限の南北振動を復元する。これまでの研究によって,北半球のダンスガードオシュガーサイクルに相当するような最終氷期の短周期海氷分布変動の可能性が示唆されたため,さまざまなプロキシデータから検証し,最終氷期における南極寒冷圏変動の高解像度復元を行う。また,有機地球化学分析(有機炭素・窒素同位体比,バイオマーカー)によって,生物ポンプ,栄養塩供給(湧昇流)を復元し,南大洋における海洋フロントの移動,ダスト供給,生物地球化学プロセスなどの実態を明らかにする。 これらの研究成果を国内外の学会等で報告し議論を深め,順次国際誌に論文を投稿する。
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