本研究の目的は、高温高圧下にある流体や晶出した結晶の化学組成をその場で測定する方法を新しく開発することである。そのような流体は急冷することが難しく、急冷結晶として晶出する場合が多く、その場で測定する方法の開発が急務である。蛍光X線を測定する方法が既にあるが、軽元素が測れないという致命的な欠点がある。酸素や炭素のような軽元素の蛍光X線は空気やアンビル材でほとんど吸収されてしまう。 本研究では全く新しい方法として、パルスレーザー光をダイヤモンドアンビル内の試料に集光し、プラズマを発生させて、そのプラズマが原子に戻る際のスペクトル(ブレークダウン分光)を測定することを考えた。しかしこのような方法は世界中で誰も行っておらず、実現ができるかどうかすら分かっていない。本研究ではこの方法を試みた。 最初に高温高圧条件の流体を安定に発生させるために、水熱ダイヤモンドアンビルセルを導入して、観察系や加熱系を整備して、高温高圧下の実験が行えるようにした。温度はダイヤモンドの安定性から1000度以下に限られるが、5 GPa程度までの圧力を発生でき、内部は顕微鏡でモニターでき、かつラマン分光の測定も可能である。圧力はダイヤモンドアンビル先端のラマンシフトから決める。先端だけからのラマン散乱を取れるように自作ラマン分光装置を改良した。 プラズマの発生と分光のために、ピコ秒レーザー(予算の関係で表題のフェムト秒レーザーは導入できなかった)、広帯域分光器と検出器を新たに導入した。それを使って、ダイヤモンドアンビル内でのプラズマ発生実験を行っているが、機器のトラブル等で今のところまだ成功していない。現在も続けてプラズマブレークダウン分光に成功するように努力しているところである。
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