研究概要 |
本研究はCO2-H2O成分を含むケイ酸塩メルト(急冷ガラス)の構造を先端NMR測定及び第一原理計算により解明することを目標にしている。本年度では主に下記の研究を行なった。 1.水を含むM2O/SiO2比の異なるM2O-SiO2系(M=Na,Li)の急冷ガラスを、ピストンシリンダーおよび内熱ガス圧装置を用いて合成した。それぞれ1H MAS NMR, 23Na (または7Li)→1H CPMAS NMR, 23Na→1H TRAPDOR, 7Li-1H REDOR, 29Si→1H→29Si CPMAS NMR, 23Na 3QMAS NMRなどの測定を行なった。それによりアルカリケイ酸塩ガラス中の水の存在状態(NaOHやLiOH種の有無、SiOH種の水素結合及び空間的分布など)に関する新たな知見を得た。 2.CO2を含む複数のケイ酸塩(Na2O-SiO2, CaO-MgO-SiO2)及びアルミノケイ酸塩(CaO-Al2O3-SiO2, Na2O-Al2O3-SiO2)急冷ガラスをピストンシリンダー高圧装置を用いて合成した。CO2の存在状態(特にこれまで合意の至っていなかった炭酸塩イオンの局所構造)を解明するために、合成した試料はラマン及びNMR測定を行なった。また、実験データの解釈を支援するために、分子軌道法計算も行なった。その結果、異なった局所構造をもつ炭酸塩イオンの区別には13C化学シフトテンソルが有効であることが分かり、それを用いてケイ酸塩メルトにおけるCO2の溶解機構に関する新たな知見を得た。 3.先端NMR測定法及び第一原理計算を複数のケイ酸塩及び関連無機化合物結晶相(K-cymriteやAlPO4,Zn2SiO4,Ca2Si2O6-Ca2Al2O5系の高圧相等)に応用し、他の手法から得難い知見や未知構造の決定に繋がった。より複雑なガラスの構造解明の基礎を築いた。
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