研究課題/領域番号 |
23244108
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
奈良岡 浩 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20198386)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 始原隕石 / 有機化合物 / 化学進化 / 高分解能質量分析 / 同位体比分析 / アルキルピリジン / チチバビン反応 / 隕石母天体 |
研究概要 |
昨年度に引き続き、炭素質隕石の中でも比較的有機物含有量に富んでいるMurchison隕石のさまざまな溶媒による抽出物を、高速液体クロマトグラフ多段階質量分析計(HPLC-MS/MS)で分析した。特に分離カラムとして、親水性相互作用(HILIC)カラムを用いて、移動相としてアセトニトリル/ギ酸アンモニウム緩衝液を用いた場合に比較的良い分離ができた。エレクトロスプレーイオン化により、アルキルピリジンを始めとする様々な含窒素芳香族化合物が存在することが明らかとなった。これらはアルデヒドとアンモニアが反応することにより生成することが知られており(チチバビン反応)、実際にカンラン石を触媒として、アルデヒドとアンモニア水を加熱することにより生成した化合物の分布が、隕石中に見出された化合物の分布と似ていた。構造異性体が非常に多く、標準試料を入手できないために、個々の化合物の同定はできないが、原始太陽系に比較的多量に存在したアルデヒドとアンモニアが隕石母天体上で水存在下で生成したものと考えられる。隕石母天体上で起こった最も古い反応の1つである。この発見について、学会発表を行うとともに、学術誌に論文投稿を行った。 また、隕石有機化合物の古さを評価する手法のひとつとして、化合物レベル酸素同位体比測定法の開発を行った。隕石中にも存在が報告されているフェノールやメタノールなどのアルコールの標準試薬を用いて、数ナノモル程度の酸素を化合物について 、ガスクロマトグラフ熱分解同位体比分析を行った。フェノールについては0.7パーミル程度の再現性で分析が可能となったが、メタノールやエタノールなどについては測定時のバックグラウンドの変化が大きく、さらなる検討が必要であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究目的達成のための計画遂行ではおよそ順調である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究目的と研究計画には変更はなく、太陽系最古の有機物を炭素質隕石中に探索する分析を実施するのみである。予想以上に多い構造異性体の化合物が入っているので、ガスクロマトグラフのキャピラリーカラムによる分離が大きな問題であるが、化合物の水素や窒素の同位体比を測定を可能にし、その同位体比から最古化合物にせまる。
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