研究課題
昨年度に引き続き、太陽系最古有機物の化学構造を明らかにするためMurchison隕石(CM2)中に含まれる化合物を超高分解能質量分析により解析した。地球上の有機物には見られない同位体的に重い水素や窒素に富んでいるメタノール抽出画分にはm/z100~500の範囲にピリジンのアルキル同族体の他にイミダゾールやピペリジンのアルキル同族体も比較的多く含まれており、これら含窒素環状化合物がより始原的な化合物である可能性を示唆した。また、Murray隕石(CM2)についても分析を行い、同様な含窒素環状化合物が優位に存在した。これらの含窒素環状化合物はアルデヒドとアンモニアを含む水溶液を60~80℃で加熱することにより容易に生成することをシミュレーション実験により明らかにした。アンモニアが存在するアルカリ性条件下で、ホルモース反応・アルドール縮合が進行し、ケトンとアンモニアからのイミン形成を経て含窒素環状化合物が生成していると考えられる。とくに、反応系にカンラン石が存在する実験では、カンラン石が存在しない場合に比較して、化合物分布が隕石中化合物の分布と似ており、カンラン石が炭素鎖伸長(より大きな分子)や酸化還元反応(カルボン酸生成や水素付加反応)に重要な役割を果たしている。これらは隕石母天体上での有機物-鉱物相互作用が化学進化にとって重要であることを示唆する。揮発性アルキルピリジンについてはガスクロマトグラフ質量分析計による構造異性体の分離・定量も行った。隕石中において特定の異性体が優位に存在し、その生成反応過程を反映していると思われる。化合物毎の炭素・水素・窒素の同位体比分析も引き続き行っている。研究計画の最終年度として、論文を学術誌に発表した。さらに引き続きの論文を投稿準備中である。また、研究を発展させるため研究申請も行った。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
Earth Planets Space
巻: 67 ページ: in press
Geochemical Journal
巻: 48 ページ: 519-525
doi:10.2343/geochemj.2.0340
Chromatography
巻: 35 ページ: 103-110
doi.org/10.15583/jpchrom.2014.014