平成23年から3年間にわたるコンプレックスプラズマ研究はミクロンの大きさの微粒子とプラズマの相互作用によりもたらされる新たな物理現象に焦点があてられた。プラズマ中に存在する微粒子はプラズマ粒子を表面に集め負に帯電し、プラズマが全体として電気的に中性であろうとすることから、微粒子がプラズマ中に閉じ込められ、複合系としてふるまうことからコンプレックスという名称を冠したプラズマが出来上がる。微粒子は0.5ミクロン程度の可視光レーザーを当てることにより、その散乱光をCCDカメラでとらえることができる。横浜国大では独自のコンプレックスプラズマ装置を使って、微粒子の帯電状態、微粒子が作る構造形成を観測し、さまざまな新しい現象を報告した。平成24年7月にはスエーデンの国際会議(第39回ヨーロッパ物理学会と第16回プラズマ物理国際会議)で、極低温コンプレックスプラズマ中での低次元構造形成について招待講演を行った。そこでは、低温状態における微粒子帯電における量子効果、シース中に浮上し形成する2次元微粒子構造とその極低周波を特徴とする集団運動について発表した。また平成25年12月には第8回アジア太平洋プラズマ科学の基礎と応用国際会議〈台湾〉での招待講演ではコンプレックスプラズマ中で見出された微粒子が作るバウショックや渦現象について報告した。バウショック構造(Phys. Rev. Lett.に掲載)はコンプレックスプラズマが磁気圏プラズマの構造を再現できることを示し、渦現象(Phys. Rev. Lett.に掲載)では、プラズマの回転が微粒子の運動を引き起こし、自然界での竜巻現象を粒子レベルで可視化したものとして注目される。一方、微粒子が作る2重らせん構造(Phys. Rev. Eに掲載)はコンプレックスプラズマが分子生物学との関連で、構造形成に基礎的な知見を与えうることを示した。
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