研究概要 |
本研究申請時に投稿中であったイリジウムサレン錯体を触媒として用いる分子内不斉C-Hアミノ化反応について,審査員の指摘に従い本年度に追加実験を行った。その結果明らかとなった位置選択性の制御要因を含めて不斉分子内C-Hアミノ化について報告した。 ついで、イリジウムおよびルテニウムサレン錯体を触媒として分子間不斉C-Hアミノ化に関する検討を行った。予期に反してイリジウムサレン錯体の触媒活性は低いものであったが、アジリジン化のために開発したルテニウムサレン錯体が興味ある触媒活性を示すことを見出した。C-H結合は二重結合より反応性が小さいことから,C-Hアミノ化の遷移状態におけるナイトレノイド中間体とC-H結合との距離は、アジリジン化におけるナイトレノイド中間体と二重結合との距離よりも小さいものと推測し,ルテニウムサレン錯体の最適化を試みたところ、サレン配位子のビナフチル部の2"-アリール置換基として2,6-ジフルオロフェニル基を持つ触媒が極めて高い位置選択性とエナンチオ選択性を示すことを見出した。例えば、trans-3-hepteneは2および5位に2個の活性メチレンをもつが、アミノ化は2位のみで進行する。エナンチオ選択性も91%eeと高い。この特異な選択性は、C-H結合の結合エネルギーとは関係なく,触媒がもつ小さな反応空間に基づくものと推測している。これらの成果は現在投稿中である。 本年度はアジリジン化触媒を基に改良を行い、C-Hアミノ化触媒を開発することができた。そこで,さらにアミノ化触媒を改良してアジリジン化触媒とすることを検討した。これまでに,ナイトレノイド中間体のN-スルホニル基と近傍に存在する反結合性6-軌道を適切に相互作用させることでナイトレノイド中間体の反応性を向上させることができ,反応性の乏しい末端アルケンのアジリジン化を収率よく行うことができることを見出している。
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