研究課題/領域番号 |
23245009
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
香月 勗 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 教授 (40037271)
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研究分担者 |
松本 和弘 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40512182)
内田 竜也 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (50380564)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ルテニウムサレン錯体 / ナイトレン移動反応 / 不斉C-Hアミノ化 / アジリジン化 / アジド化合物 |
研究概要 |
昨年度、2"-位に2,6-ジフルオロフェニル基を持つRu-サレン錯体(1)がアルケンのアリル位のC-Hアミノ化をエナンチオおよび位置選択的に触媒することを見出した。また、2"-位に3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基を導入したRu-サレン錯体(2)がナイトレノイドのスルホニル酸素とのn-σ相互作用を通してナイトレノイドを活性化しアジリジン化を円滑に触媒することを見出した。本年度はこれらの知見を基にアジリジン化とC-Hアミノ化についてさらに検討を行った。2-(トリメチルシリル)エタンスルホニルアジド(SESN3)と上記の錯体(2)を用いた末端の非共役および共役オレフィンのアジリジン化で高エナンチオ選択性を達成することができた。既知の方法と異なり、本法は反応性の低い非共役オレフィンの反応でもPdなどの添加を必要としない。SESN3と錯体1を用いたC-Hアミノ化についても詳細な検討を行ったところ、これまでにない特異な位置選択性が観測された。3-ヘプテンあるいは1-エチル-4-プロピルベンゼンをアミノ化に付すと、エチル基のアリル位あるいはベンジル位でのみ反応が進行し、プロピル基での反応は観測されない。さらに化学選択性も高く窒素や酸素などのヘテロ原子が存在しても、アリル位あるいはベンジル位でのみ反応が進行し、ヘテロ原子のα位でのアミノ化は観測されない。尚広い基質適用範囲にも係らず、鎖式(Z)-オレフィンは反応性を示さない。UV,可視吸収スペクトルによる解析から、(Z)-オレフィンが配位してアジドの分解が阻害されるものと推測された。C-Hアミノ化に対しては、協奏的挿入と段階的挿入の二つの機構が提案されているが、各種ラジカルクロックを用いた実験から協奏的挿入機構が示唆された。但し、極めて短寿命のラジカル中間体の関与を完全に否定できない。本年度は以上の結果を報告することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度に開発した触媒を用いて、高エナンチオ、位置、および化学選択的C-Hアミノ化を実現することができた。本法では、窒素や酸素などのヘテロ原子が存在しても、そのα位でのアミノ化は全く観測されない。また、エチル基とプロピル基とを完全に区別することができ、プロピル基存在下でエチル基のみをアミノ化することが可能となった。アルケンのアミノ化で(Z)-アルケンのみが反応しない。(Z)-アルケンの配位によりアジドの分解が抑制されることに起因することを明らかにすることができた。これらの成果の報告は、Angw. Chem. Int. Ed.にHot Paperとして紹介された。一方、昨年度に開発されたアジリジン化触媒を用いて、反応性の低い末端非共役アルケンのアジリジン化でも、添加剤を用いることなく高エナンチオ選択性を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
予定した研究計画に従って研究を遂行することができており,次年度以降も当初計画に従って研究を実施する。
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