本研究においては、23年度に、イリジウム触媒を用いた分子内不斉C-Hアミノ化を達成し、24年度にはさらにルテニウム(カルボニル)サレン錯体を用いることで、アジド化合物を窒素化剤とする初めて高エナンチオ選択的不斉分子間C-Hアミノ化反応を開発し、さらに本反応が、エチル基あるいはメチル基上のC-H結合を選択的に変換する特異な位置選択性を示すことを見出している。 ルテニウム触媒を用いた分子間C-Hアミノ化に関する速度論的同位体効果の検討、およびラジカルクロックを用いた検討から本反応は、短寿命なラジカル中間体の関与、あるいは協奏的反応機構が示唆された。 そこで、本年度はさらに速度論的同位体効果について詳細な検討を進めた。その結果、ベンジル位のC-H挿入反応における同位体効果(重水素効果)はKIE=8~13と非常に大きな値を示すことが明らかとした。また、この重水素効果の大きさ、および本ルテニウム触媒の優れたエナンチオ選択性から、本反応では、水素、および重水素の様に電子的にも、立体的にもほとんど差違がなく、分割が困難な同位体によって構成される立体不斉中心を速度論的に分割することができるものと考えられる。 同考察から、新たにラセミ体のα-D-エチルベンゼン類を新たに合成し、反応の検討を進めた。その結果、速度比5~13の良好な選択性にて同位体由来のエナンチオマーを分割しつつ、対応するアミノ化生成物が高エナンチオ選択的に進行することを明らかにしている。
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