研究課題/領域番号 |
23245014
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大場 正昭 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (00284480)
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研究分担者 |
堀 彰宏 独立行政法人理化学研究所, 空間秩序研究チーム, 特別研究員 (50595064)
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キーワード | 多孔性金属錯体 / スピン転移 / ゲスト応答性 / メゾ結晶 |
研究概要 |
本研究は、外部刺激により物性および機能を制御可能な集積系および孤立系の金属錯体を創出し、それらを高次に組織化して、個々の金属錯体の機能・物性が連動する高度な刺激応答機能の能動的制御の達成を目指す。そのために、金属錯体の組織化構造と相互作用部位の配置を合理的に制御して、金属錯体分子が動的かつ協同的に機能する相互作用空間をボトムアップ的に自在に構築する手法を確立する。 本年度は、三次元多孔性金属錯体{Fe(L)[Pt(CN)_4]}(L=pyrazine(1),1,2-di(4-pyridyl)ethylene(2),1,2-di(4-pyridyl)ethane(3))を合成し、それらの機能・物性評価を進め、高度機能の発現と制御を目指した。化合物1は、T_c=305Kで20Kのヒステリシスを伴うスピン転移を示し、室温でCS_2を吸着すると低スピン状態を安定化した。また、thioureaを包接させると、T_cは低下するが、ヒステリシス幅が3倍になることを見出した。逆ミセル法により粒径が200nm程度の1のメゾ結晶を調整すると、T_cが275Kに低下した。このメゾ結晶は、磁気双安定領域の外でも可逆的にCS_2に対して応答した。更に、水に懸濁液はバルク粉末の溶液の10倍以上の感度でCS_2に応答することを分光測定により確認した。また、このCS_2包接体を330Kまで加熱すると、水中で高スピン状態になるとともにCS_2を放出することを確認した。1の細孔空間を拡張した化合物2と3は、1では包接できない大きな有機分子、bibenzyl、anthracene、phenazine、xantheneなどを導入することができた。高輝度放射光によるX線回折測定と磁気測定から、これらのスピン転移挙動とゲスト分子の構造およびホストーゲスト相互作用との相関を詳細に検討した。今後は・光刺激にようスピン状態変化と、それに伴うゲスト分子放出について検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、(1)刺激応答性金属錯体の設計と合成、(2)刺激応答性金属錯体の機能・物性評価、(3)高度機能の発現と制御の3項目を推進する。(1)では、集積系において予定通りの化合物開発が進み、(2)では高輝度放射光を用いた測定等からゲスト応答性について詳細に検討できた。(3)でも、逆ミセル法による粒形サイズの制御法がほぼ確立できており、次年度以降にゲスト放出制御と高感度センシングへとつなげる基盤を構築できた。
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今後の研究の推進方策 |
分子吸着・放出の自在制御に関しては、吸着制御と比べると放出制御は難易度が高い。空気中では放出後に真空系になる点が1つの問題であるため、水中での徐放および外場による放出制御を中心に検討する。また、次年度以降は、より特異的な刺激応答性の発現のために、孤立系も含めた新規化合物の設計と合成、およびPost-syntheticmodificationによる機能性分子と集積系金属錯体の複合化を推進する。
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