研究課題/領域番号 |
23245017
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
今坂 藤太郎 九州大学, 工学研究院, 主幹教授 (30127980)
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キーワード | 超短パルスレーザー / レーザーイオン化質量分析 / 環境分析 / 波長変換 / 食品分析 / 生体分析 |
研究概要 |
Aレーザーの波長変換技術の開発 本年度新しく導入した超短パルスレーザー再生増幅器(出力:4W、中心波長:800nm、時間幅:35fs)を用いることによって、以下の成果を得た。 1.第3高調波(波長:266nm)と基本光(波長:800nm)のBBO結晶中での和周波混合によって、パルスエネルギー15μJの深紫外第4高調波発生(波長:200nm)に成功した。また、第3高調波(波長:266nm)に対しても、従来の装置に対して3倍以上となる最大650mWまで出力を増大させた。 2.光パラメトリック増幅器によって、発生したシグナル光(波長:1200nm)、およびアイドラー光(波長:2400nm)を、基本光と共に水素分子(圧力1-10atm)と相互作用させた。その結果、水素分子の振動モードに共鳴した、高次ラマンサイドバンド光(波長:600nm、480nm、400nm)の発生に成功した。 Bレーザーイオン化質量分析計の開発 飛行時間型質量分析器への試料導入法として、モノリスカラムをトランスファーラインとした新規手法を考案した。クロロベンゼンを試験試料とし、試料の導入とマススペクトルの観測に成功した。また、トルエン、ナフタレンとの混合試料によるマスクロマトグラムの測定を実施した。 Cレーザーイオン化質量分析計の計測科学への応用 1.深紫外超短パルス光(波長:200nm)を用いて、農薬の標準試料、及び実資料分析を行った。非共役二重結合を有する化合物に対する検出感度が2倍から100倍向上することを確認した。 2.高出力紫外超短パルス光によって、テロ関連物質であるTATPの分子イオン検出感度の向上に初めて成功した。開発した手法を用いて、科学捜査での応用を視野にいれた血液中でのTATP生成反応機構の観測を実施した。従来の電子衝撃イオン化法では実現できない分子イオン直接計測による本手法の優位性を実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Aレーザーの波長変換技術の開発に関しては、(1)新規再生増幅器の導入(2)高調波発生(3)新規ラマンセルを製作(4)高次ラマン光の発生について、(3)に対する計画変更を除いては成功裏に実現した。また、B.レーザーイオン化質量分析計の開発に関しても、(1)質量分析計の高感度化(2)"モノリスカラム"導入(3)ノズルの閉塞の問題の解決について、(3)を除く実験を計画通りに実施できた。これに加えて、農薬・TATPの新規分析手法の開発を実施できたために、「(1)当初の計画以上に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
申請書の計画通りに研修を推進する。新規試料導入法を利用したレーザーイオン化質量分析計の更なる高感度化と、開発された新規分析装置の科学計測への応用(発がん性物質・ダイオキシン類・不揮発性物質・生体関連物質)を実施し、本研究によって開発された手法が従来の分析法に対して優位性を有することを実証する。また、波長変換による更なる広帯域光源の実現のために、四光波ラマン混合過程の詳細な調査を実施する。
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