研究概要 |
レーザーイオン化質量分析計の高感度化を目的とした新規導入法の研究では、従来導入法より2倍高い検出感度が得られた。また、フェムト秒レーザー光を金属に照射して発生する光電子を用いたイオン化を研究したが、これはレーザーイオン化質量分析計内で電子衝撃イオン化も可能とするものであった。クロロベンゼンを試料として研究し、開発した装置で電子イオン化できることを確認し、本質量分析計の高性能化が達成された。 開発したレーザーイオン化質量分析計を用い、PCDF, PCDD, PCB計32種の化合物を含む試料の網羅分析を行った。特に、2種のカラム(HP-5, DB-5ms)を比較・検討し、妨害成分なく全ての化合物を高感度に検出できるカラムの調査を行った。HP-5の場合ではカラムの固定相が同時にイオン化されてしまい、妨害成分が生じ検出感度が低下した。一方、DB-5msを用いた場合固定相のイオン化がなく、32種ほぼすべての化合物においてHP-5よりも高い検出感度が得られた。カラムの内径についても、0.25 mm, 0.18 mmの2種を比較・検討した。ほぼ全ての化合物において内径が小さい方が高い感度が得られており、最大で3倍感度を向上することができた。 300 nmレーザー・選択制 ジオキサン、クロロナフタレン、PCB等種々の化合物におけるイオン化挙動のイオン化レーザー波長依存性を研究した。その内多環芳香族化合物(クロロナフタレン)とクロロベンゼンのイオン化挙動の比較においては、イオン化波長を267 nmから290 nmへ変更することでクロロナフタレンのイオン信号強度が10分の1まで低下する一方、クロロナフタレンの信号強度は半分に留まった。レーザー波長によりイオン化化合物を選択できることが示された。さらに、レーザー光のパルス幅によってもイオン化化合物を選択できることが明らかとなった。
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