研究課題/領域番号 |
23245018
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
伊原 博隆 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (10151648)
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研究分担者 |
高藤 誠 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (50332086)
澤田 剛 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (90240902)
冨永 昌人 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (70264207)
ガナパシー ヒュラシー 熊本大学, 大学院・先導機構, 特任助教 (90551276)
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キーワード | 自己組織化 / 分子認識 / 超薄膜 / 界面・界面物性 / 液体クロマトグラフィ |
研究概要 |
本研究は、微細構造が物理的細孔および化学吸着相によって精密に制御された微粒子剤を構築することによって、高い選択性を示すHPLC用分離剤の開発を目指している。これらの目標・目的を達成するために、(1)球状微粒子の物理界面機能の増幅や変換を通じた機能創出と、(2)ポリマー主鎖上に一次元的に官能基を集積する有機相の開発の2つのアプローチを設計し、研究を進めている。(1)については、申請者らがすでに確立しているSelf-assembing重合法を改良して、ナノサイズのコロイダルシリカをコア細孔内に封入した複合粒子の作製に着手し、初期目標を達成した。一方(2)については、ゲスト分子との相互作用の起点となる官能基を集積し、多重相互作用によって選択性を高める手法を採用した。具体的には、カルボニル基やその他の極性基を弱い相互作用点として選定し、これらを交互共重合あるいはイオン液体性のモノマーによる重合によってポリマー鎖上に集積する手法を試みた。これらのポリマーをグラフト化した微粒子剤をカラムに充填し、選択性について評価したところ、交互共重合成分に、申請者らが独自に開発したグルタミド系分子ゲル素子を導入したものは、芳香族性分子に対して著しく高い分子形状識別能を示した。この特性を利用して分離が難しいとされるビタミンE類の選択分離を試みたところ、β体とγ体の分離係数は(ベースライン分離が可能な)世界最高値に達した。また、イオン液体性のモノマーからなる重合物の場合は、グラフト化後に対アニオンをπ共役系有機素子に変換することが可能であり、これによって選択性の向上がみられるだけでなく、対アニオンの化学構造を選択することによってHPLCにおける選択性が制御できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、物理細孔と化学吸着相の2つの視点から微細構造を制御し、高選択的なHPLC用分離剤を開発することを目標としている。当初の予定通り、前者においては、コロイダルシリカを粒子コア内に導入することに成功しており、後者においては、交互共重法あるいはイオン液体様のポリマー鎖を適用することにより、きわめて高い選択性が達成されている。なお、関連する発表論文数については、当初目標を大きく上回る7報に至っている。
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今後の研究の推進方策 |
とくに研究計画の大きな見直しはないが、細孔内におけるコロイダルシリカ粒子の充填密度の制御、ならびに化学吸着サイトとなるポリマー鎖の充填密度の向上を目標の一つに置きながら、引き続き微粒子剤の微細構造の制御ならびに高選択的なHPLC分離剤の開発を目指す。
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