研究課題/領域番号 |
23245020
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山本 嘉則 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 名誉教授 (60029519)
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研究分担者 |
金 鉄男 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 准教授 (80431493)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノ材料触媒 / 触媒プロセス / 有機化学 |
研究概要 |
本研究では、ナノポーラス金属(ナノ多孔質金属)触媒という革新的な新触媒の創成を目指し、脱合金製作技術を確立し、分子変換反応における革新的な手法を開発することを目的とした。24年度では、これまでナノポーラス金触媒は一酸化炭素やアルコールなどの酸化反応において優れた触媒活性を示したことに対して、初めてナノポーラス金触媒を用いた選択的還元反応に成功した。 1.ナノポーラス金触媒を用いたアルキンの選択的半水素化反応の開発。最近我々は、様々な有機シラン化合物がナノポーラス金触媒の存在下、室温で速やかに水と反応し、高収率で対応するシラノールおよび水素ガスを生成することを見い出した。我々は、ヒドロシランと水からナノポラス金触媒上で形成する水素原子やイオンをトラップすればアルキンなど不飽和結合の還元反応が達成できると考えた。本年度では、種々の溶媒や有機塩基を検討した結果、有機溶媒としてDMFまたはピリジン塩基をアセトニトリル溶媒として用いるとアルキンの半水素化反応が速やかに進行し、対応するアルケンが100%選択性で得られることを見い出した。さらに、内部アルキンにおいて、100%選択性でZ-アルキンを与えた。これはナノポーラス金属触媒を用いた初めての還元反応の例である。また、高分解能電子顕微鏡(SEMとTEM)およびXPSなどを用いたナノ構造解析から、ナノポーラス金触媒は化合物の化学的吸着エネルギーの相違や金属触媒表面の原子レベルの段差(原子ステップ)の違いにより異なる触媒活性を示すことがわかった。 2.ナノポーラス金触媒を用いたキノリンの選択的還元。上記したアルキンの還元反応をさらに拡大することで、ヒドロシランと水を用いてナノポーラス金触媒存在下キノリンの高選択的還元反応の開発に成功した。キノリン骨格のピリジン部位のみが選択的還元された様々な官能基を有するキノリン誘導体が高収率で得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
一般的に、担持剤を持たないナノ構造を有する金触媒は水素還元反応において非常に低い活性を示している。これは、水素ガスの金触媒表面への化学的吸着能力が低いためである。また、アルキンの水素還元反応は古くから知られているがその完璧な立体選択的かつ化学選択的反応例はほぼ知られてなかった。本年度で我々は、担持剤を持たないナノポーラス金触媒存在下、ヒドロシランと水を水素源として、適当な有機塩基を用いることで、高収率かつ100%立体選択性・化学選択性でアルキンの半水素化反応が進行することを見い出した。これはナノポーラス金触媒を用いた初めての還元反応の例である。また、ナノポーラス金触媒は簡単に回収され、さらに何回再利用してもその触媒活性が全く低下しないことから、非常にローバストであることを実証した。高分解電子顕微鏡を用いて金触媒のナノ構造を原子レベルで解析したところ、金表面の原子ステップが触媒活性の重要な部位であることがわかった。この結果は高く評価され、国際的化学誌のJ.Am. Chem.Soc.に発表された。また、本反応はキノリンなどヘテロ芳香環の選択的還元反応にも応用できることを明らかにした。この結果も高く評価され国際的化学誌のOrganic Lettersに発表された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で我々は、ナノポーラス金属触媒を新しい不均一触媒としてこれまで様々な酸化反応や還元反応おいて高い触媒活性および選択性を示すことを明らかにした。今後研究の遂行により、酸化還元反応に限らずにナノ構造触媒がさらに複雑な変換反応系にも適用できることを明らかにし、ナノテクノロジー/不均一系触媒/有機合成反応を有機的に結びつくことにより、新触媒機能の開発が期待できる。
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