研究課題/領域番号 |
23245030
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 隆史 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70214377)
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キーワード | 自己組織化 / 超分子化学 / 構造・機能材料 / ナノ材料 / 電子・電気材料 |
研究概要 |
本研究では、液晶と分子集合ナノファイバーからなる液晶物理ゲルのユニークな自己組織化能を生かして高性能・高機能電荷輸送材料を構築することを目的とした。このために電荷輸送機能を有する新しいカラムナー液晶材料の開発および液晶とゲル化剤との複合化を行った。オリゴチオフェンやカルバゾールなどの棒状のπ共役分子の両端にトリアルコキシフェニル基を導入した分子を設計・合成した。これらの分子は幅広い温度範囲でカラムナー液晶性を発現した。等方性液体状態にある試料を液晶状態まで徐冷することにより、カラム構造を電極基板上で垂直配向させることができた。この配向した液晶の電荷輸送機能を過渡光電流測定により調べた。約10-4 cm2V-1s-1のホール移動度が得られた。次に、アミノ酸誘導体のゲル化剤とカラムナー液晶とを複合化した。ゲル化剤は、液晶中で自己組織化ファイバーを形成して液晶溶媒をゲル化した。この液晶物理ゲルにおいては、電極基板上でのカラムナー液晶の均一な垂直配向は達成されず、部分的に配向が乱れることが明らかとなった。この試料について過渡光電流測定を行った結果、液晶単独と同程度のホール輸送性を示すことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度研究計画では、電荷輸送性を示す新しいカラムナー液晶や双連続キュービック液晶を開発し、アミノ酸誘導体などのゲル化剤と複合化させることにより、高速電荷輸送性を発現する液晶物理ゲルを構築することを目標とした。計画に従って研究を遂行し、オリゴチオフェンやカルバゾールなどのπ共役分子構造を有する新しいホール輸送性カラムナー液晶の開発に成功した。また、これらの液晶とゲル化剤とを複合化することで、液晶物理ゲルを構築することができた。
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今後の研究の推進方策 |
高速電荷輸送性を発現する新規液晶材料のさらなる開発、液晶の電荷輸送性向上のためのゲル化剤分子の最適化に関する研究、カラムナー液晶ゲルの垂直配向制御のための電極表面化学修飾や電場印加に関する研究、および電荷輸送性を有するファイバー形成分子の構築とその配向制御に関する研究を行う。
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