研究課題/領域番号 |
23245032
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安蘇 芳雄 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (60151065)
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研究分担者 |
家 裕隆 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (80362622)
辛川 誠 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (80452457)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2015-03-31
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キーワード | 分子素子 / 共役オリゴマー / 電極アンカー / 被覆分子ワイヤ / 導電性計測 / 分子エレクトロニクス / オリゴチオフェン |
研究概要 |
分子光電変換や分子熱電変換においては正孔伝導(p型)と共に電子伝導 (n型)性の分子ワイヤが必須となる。さらに、熱電変換においては熱伝導を抑え、高い電気伝導を達成する必要があり、分子間相互作用を抑えて狭い透過因子を実現するためのワイヤ部の被覆化とオーミック接合を確保するためのアンカーの選択が重要となる。 1.各種π接合三脚型アンカーの探索と優先注入電荷種の解明 これまでの研究で、三脚型ピリジルアンカーを導入した分子ワイヤにおいてπ電子が関与する金電極との結合(π接合)とLUMO軌道が関与する電子輸送を示唆する結果を得ている。そこで本研究では、チオフェン、セレノフェン、ピレン等の電子豊富なπ電子系を接合官能基とする三脚型アンカーの開発を行い、π接合と正孔輸送に適したアンカーの探索を行った。チオフェンを組み込んだ三脚型アンカーの光電子分光でπ接合を確認し、また、トリフェニルメタンとトリフェニルシラン骨格の三脚での電極接合能の違いを明らかにした。 2.本格的な単分子素子の設計・開発と分子デバイスの構築 これまでの研究で、スピロ置換チオフェンモノマーを用いた完全被覆分子ワイヤの両端にチオールアンカーを導入した単一分子の電気伝導距離依存性を明らかにしている。しかし、その鎖長は6量体に留まったため、本年度はさらに長鎖の分子ワイヤの合成に重きを置き、溶解性確保のための分岐アルキル鎖を有するスピロ置換チオフェンモノマーを用いて8量体までのオリゴマーの合成に成功した。基本物性評価から高い共役平面性と有効的な被覆を確認しており、さらに長鎖の被覆分子ワイヤの合成を行っている。また、単分子光電変換素子に向けて、チオールアンカーを有する鎖長の異なるオリゴチオフェンとフラーレンを直線的に連結した化合物を合成し、光誘起による電荷分離と金電極上の単分子膜において光電変換機能を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、被覆分子ワイヤの合成とアンカー導入、導電性計測に成功している。また、各種のπ電子系を電極接合部とする三脚型アンカーにおいて金電極との接合を確認しており、「π接合」を活用した分子エレクトロニクスの構築実現に期待が持てる。以上から、研究の目的の達成に向けて、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究を踏まえて本格的な分子デバイスへと発展させるために、精緻な分子設計による物性の制御によって電子注入およびスピン注入や整流、光電変換、熱電変換に適した単一分子系の合成を行い、分子デバイス構築と単分子機能の実証を目指す。既に、単分子デバイスにおける被覆分子ワイヤおよび三脚型アンカーの有用性が明らかになりつつあり、新しく得られた知見を元に研究計画を微調整しているが、特段の問題点は無い。
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