研究概要 |
糖タンパク質を化学合成するために必要な糖ペプチドチオエステルの簡便な合成を検討し、適応困難と思われていた強酸を用いるBoc法によりシアリル糖ペプチドチオエステルを合成することに成功した。この方法が成功したことで83位にシアリル糖鎖をもつエリスロポエチンの全合成に成功した(Angew Chem. Int. Ed. 2012, 51, 3567)。25年度は、この手法をもちいて、3本のヒト型シアリル糖鎖を天然型の位置3カ所にもつエリスロポエチンの全長構築を検討した。その結果少量ではあるがその合成に成功し、現在そのフォールディングを検討している。アミノ酸120残基からなるシアル酸結合レクチンシグレック7の化学合成に成功した(投稿準備中)。このシグレックはELISAをつかって基質特異性を調べた結果、本来の基質であるジシアロ糖鎖には結合するがモノシアロ糖鎖には結合しないことが確認できた。大腸菌で、標的糖タンパク質のセグメントが2つ連結した融合タンパク質を発現させ、それを化学的に切断、活性化させることで標的糖タンパク質のN末端のペプチドチオエステルと、C末端側のペプチドを調製することに成功した。そして化学的に調製した糖鎖ペプチドチオエステルと連結することでインターロイキン13 の合成に成功した(投稿準備中)。鶏卵から単離した2分枝ヒト型糖鎖を化学的に修飾することで24個の水酸基のうち特異的な位置の水酸基を遊離としそこに糖鎖を付加させることで天然型の3分枝型糖鎖の半化学合成に世界ではじめて成功した(投稿準備中)。また、この糖鎖に酵素を用いて、シアル酸を2種類の結合様式で連結させることに成功した。ヒトIgG1のFcモノマーの全長の合成を検討し成功した。得られた糖ペプチド全長は、プロテインジスルフィドイソメラーゼを共存させたフォールディング実験で目的とする2本ジスルフィド結合を形成したFcモノマーを得ることがでた。
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