研究課題/領域番号 |
23245041
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
瀧宮 和男 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40263735)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 有機電子材料・素子 / 有機トランジスタ / 有機太陽電池 / 有機半導体 / 新規骨格 |
研究概要 |
申請者は有機合成化学を基盤に有機半導体材料の開発と有機トランジスタへの応用を行ってきており,これより「従来の枠に囚われない有機半導体骨格」の開発の重要性を強く認識してきた.本研究では,有望な新規骨格はもちろんのこと,これまでに報告例はあるものの材料として取り上げられていない骨格,または,適当な合成法がない為そのポテンシャルを十分に精査できていない半導体骨格(未踏有機半導体骨格)に焦点を当て,それらの設計・合成・応用を行うことを目的とする. 本年度は,これまでに開発してきたNDTのチオフェン環を他のカルコゲノフェン環(フラン,セレノフェン)に置き換えた新規骨格(ナフトジカルコゲノフェン)を開発し,物性評価,デバイス応用を行った.また,NDTの中央のアセン部分をナフタレンからアントラセンに置換したアントラジチオフェン(ADT)は従来異性体混合物として研究されてきたが,物性的に最も期待できるC2h対称性をもつ異性体(anti-ADT)の選択的合成法を開発でき,その有機半導体材料への応用も実施した. さらに,そのフラン,及びセレノフェン類縁体の開発も行い,その特性を明らかにした.一方で,これまでに,7個以上の芳香環が直線状に縮合した巨大π電子系も複数開発してきたが,本年度,新規な環縮合伸長法の開発に成功し,材料合成に応用できることを見出した.開発した巨大π電子系分子については,今後物性評価を行う予定である.さらに,NDTなどの基本骨格の位置選択的な分子修飾法も確立し,種々の有用中間体の開発にも成功している.これらも次年度以降の材料開発に用いていく予定である. これらに加え,n型半導体骨格として,ナフトビスチアジアゾール(NTz)の効率的な合成法の開発に成功し,半導体ポリマー主鎖骨格への導入と低分子材料への応用に着手した.NTz系も次年度以降の材料開発に応用していく事が可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究提案時に標的化合物として想定していた未踏半導体骨格のうち含硫黄系のp型半導体候補について,合成(検討も含め)は,ほぼ完了しており,それらの酸素,およびセレン類縁体の開発にも展開できている. さらに,これらの骨格を修飾することで中間体として新たなオリゴマーやポリマーに展開するための手がかりも得ている. 以上の理由から,当初の計画以上に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,多様な材料系,および骨格探索を進めるとともに,その展開や応用,特にオリゴマー半導体,ポリマー半導体への応用を目指す.この目的のためには,高効率なカップリング反応を活用するだけでなく,複数の反応性官能基を必要としないCH活性化型のカップリングも検討する. さらに,従来検討してきたトランジスタ材料としての応用に加え,太陽電池材料としての応用にも注力する.中でも,世界的な競争分野となっている有機薄膜太陽電池の研究分野に新たな半導体骨格を提案することで,材料の多様性に基づく高効率化に寄与する.
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