研究課題/領域番号 |
23245042
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山田 淳夫 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (30359690)
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研究分担者 |
山田 裕貴 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (30598488)
西村 真一 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特任研究員 (00549264)
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キーワード | リチウム電池 / 正極 / 二相分離反応 / インターカレーション |
研究概要 |
結晶材料への電気化学的インターカレーション反応はリチウムイオン電池の基本反応である。本研究では、インターカレーション反応おける微視的なイオン拡散が協奏的に発現することで反応・未反応相境界が形成され、絶縁性材料においても高速な核生成・成長反応が起こる現象に着目し、その反応機構体系化を目的とする。 平成23年度は、絶縁性でありながら高速なインターカレーション反応を起こす材料として広く認識されているLiFePO_4に焦点を当て、核生成・成長の一般理論であるAvrami理論と電気化学手法(クロノアンペロメトリー)を組み合わせた反応機構解析を行った。その結果、LiFePO_4粒子の粒径と電位ステップ(過電圧)の大きさに依存して、異なる反応機構(単相 or 二相)によりインターカレーション反応が進行することを見出し、それが化学ポテンシャル曲線により説明可能であることを明らかにした。加えて、Avrami理論を用いた電流応答曲線の詳細な解析により、相境界移動現象が1次元に進行することを示し、その活性化エネルギーがリチウム挿入・脱離方向ともに40 kJ mol^<-1>となることを明らかにした。同様の実験を黒鉛へのリチウムインターカレーション反応に対しても行い、相境界移動現象が従来考えられていた二次元方向ではなく一次元方向に進行している可能性を示した。 上記の核生成・成長反応ダイナミクスの測定に加えて、相境界における静的なリチウム分布を調べるため、Li_xFePO_4の反応エントロピーを実験的に測定した。その結果、反応エントロピーがリチウム組成に依存して変化する挙動が見られ、相境界界面においてリチウム組成分布が不連続ではなく連続的に変化していることを示す結果となった。これにより、核生成・成長電極反応における、リチウムの空間分布を定量解析することが可能であることを示した。 平成23年度の成果の一部は、査読付き論文誌に1報掲載済みであり、それ以外の成果についても投稿論文を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
核生成成長反応の観察に適した反応場条件の抽出、電気化学手法と結晶成長理論を組み合わせた解析手法の確立を完了し、その成果は査読付き論文誌に掲載済みである。さらには反応エントロピー測定による電極内リチウム分布の測定にも成功した。よって、平成23年度に予定していた実験はほぼ計画通りに進展しており、おおむね順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
現状、順調に進展しているため、申請書通りに研究を推進する。
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