研究課題/領域番号 |
23246003
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研究機関 | 公益財団法人名古屋産業科学研究所 |
研究代表者 |
竹田 美和 公益財団法人名古屋産業科学研究所, その他部局等, 研究員 (20111932)
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研究分担者 |
金 秀光 名古屋大学, 学内共同利用施設等, 特任助教 (20594055)
宇治原 徹 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60312641)
渕 真悟 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60432241)
田渕 雅夫 名古屋大学, 学内共同利用施設等, 特任教授 (90222124)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 結晶成長 / スピントロニクス / 表面・界面物性 / 量子エレクトロニクス / 量子ビーム |
研究概要 |
平成23年度は、歪みの印加調整のため中間層にAlGaAsを用いることにより、GaAs中間層による吸収を抑制すると共に、GaP基板に反射防止膜を設けることにより、偏極度90%を保ったまま、量子効率を0.1%から0.4%へと4倍の増大に成功した。また、中間層なしの場合の超格子厚さの変調発生原因と中間層による抑制の機構を、ナノビーム電子顕微鏡による観察結果より明らかにした。 これらの成果に基づき、平成24年度では新たにAl0.1Ga0.9As0.81P0.19を中間層に採用するに至った。この中間層は、励起光(1.55eV)に対して透明であるとともに、超格子を構成するGaAsとGaAs0.64P0.36の中間の組成であり、GaP基板の格子を緩和した後は、超格子の歪み補償構造となる。従って、従来のGaAsやAlGaAs中間層では歪の蓄積を免れず、超格子ペアー数に制限があった(12ペアーにとどめていた)点が解除され、24ペアー、36ペアーでの成長が可能となった。 このことは、フォトカソードによる励起光の吸収率が増加することを示し、従って量子効率が増大することに至る。これは実験的に確認され、12ペアー、24ペアー、36ペアーの超格子を持つフォトカソードを作製し、いずれも90%の偏極度を保ったまま、量子効率はそれぞれ0.1%、0.4%、0.5%へと確実に増加した。これらはいずれもGaP基板側の反射防止膜なしでの値である。 今後の課題は、反射防止膜による量子効率の増大と、ペアー数増大による時間応答の変化の追及である。また、励起光のエネルギーに対する時間応答と電子ビームのエネルギー分布の測定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Al0.1Ga0.9As0.81P0.19を中間層に採用することにより、超格子の歪み補償構造を成し、超格子ペアー数の制限(12ペアーにとどまっていた)点が解除され、24ペアー、36ペアーでの成長が可能となった。これにより、12ペアー、24ペアー、36ペアーの超格子を持つフォトカソードを作製し、いずれも90%の偏極度を保ったまま、量子効率はそれぞれ0.1%、0.4%、0.5%へと増加した。これは、本研究の当初目標の3倍を超える成果である。 もう一点の当初目標であった透明基板への張り合わせ法は、その技術とプロセスがあまりにも煩雑であるため、一度の成長過程で作製可能な上記の中間層での歪み補償法に切り替えた。
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今後の研究の推進方策 |
すでに当初目標を超える4倍の量子効率を得ているが、GaP基板側の反射防止膜なしでの値である。 今後の課題は、反射防止膜による量子効率の増大と、ペアー数増大による時間応答の変化の追及である。また、励起光のエネルギーに対する時間応答と電子ビームのエネルギー分布の測定である。
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