SiCは、シリコンパワーデバイスの性能を遙かに凌ぐ材料として期待されている。SiC基板は商業的には昇華法で成長されているが、これらには1000~10000/cm2の転位が含まれており、SiCデバイスにおける大幅な性能・信頼性低下の原因となっている。溶液法は平衡に近いプロセスであり、高品質SiC結晶成長への応用が検討されている。最新の我々の研究では、溶液法では、重篤な欠陥であるマイクロパイプ・基底面転位は皆無、貫通らせん転位も昇華法と比較して減少することを確認している。しかし、これらは「無転位」ではない。究極的に必要とされる「無転位」は、単に溶液法を用いるだけでは実現されない。 昨年度に引き続きオフ角をもった種結晶を利用することで、種結晶中の貫通転位のほとんどが、基底面の転位に変換することに成功し、比較的長時間の成長を実施したところ、従来のSiC結晶と比較して、格段に結晶性が向上し、特に貫通らせん転位は、ほぼ皆無となった。本年度はさらに欠陥変換メカニズムについて詳細に調べたところ、マクロステップの高さが高いほうがより変換が生じやすいことがわかった。さらにマクロステップのエッジと(0001)方向とのなす角度と変換率の関係をTEM観察などにより調べたところ、ある一定の角度以上で、変換が生じることが明らかになった。さらに、これらの現象は転位周辺の歪み場による歪みエネルギーにより説明できることがわかった。
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